2000年03月27日
宇部興産、排ガスフィルター用チラノ繊維製造設備を増強
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:宇部興産

 宇部興産は27日、東京都が打ち出したディーゼル車排ガス規制強化方針に合わせ開発促進体制を強化、排ガスフィルター(DPF)用のチラノ繊維の生産能力を一挙に年産数10トンまで増強する設備計画の詳細検討に入った、と発表した。
 同社は、1993年からDPFの主要材料となる炭化ケイ素系繊維(商品名:チラノ繊維)を開発してきた。このチラノ繊維を使用するDPFは、9ミクロンと14ミクロンの繊維径の異なる2種類のフェルトを組み合わせフィルターにしたもので、アモルファス構造による適度な弾力性、優れた強度、そして抜群の耐熱性を有している。チラノ繊維の持つ特性を十分活かしているため、従来ハニカム型DPFで問題となっていた再生時の破損が起こらず、国内で唯一15万km以上の連続走行にも耐えられるのが特長。東京都や川崎市の公営バスおよびゴミ収集車での実証運転で確認されている。また、地元宇部市が導入した低床型・低公害バスにもこのフィルターが採用されている。
 ディーゼル車の排ガス中に含まれる粒子状物質(PM)の除去効率80%以上の確保と、カーボン、煤、ハイドロカーボンや硫酸カルシウムが含まれている粒子状物質を長期に安定して除去するためには、繊維径が細く高温での耐久性に優れているジルコニウムを含んだチラノ繊維が最適な材料として注目されている。
 チラノ繊維は約20年前に宇部興産が東北大学金属材料研究所と共同で開発した炭化ケイ素系無機繊維で、耐熱性に優れた半導体の性質をもつ細くてしなやかな繊維。この性能を活用、宇宙航空用のプラスチック複合材(FRP)の強化繊維や、将来の環境保全対策の一つとして有望視されているガスタービンの高温化材料用セラミック複合材(CMC)の強化繊維として、実用化に向けた開発が行われている。ただし、現状の市場規模では量産効果が発揮できず、DPF用としてチラノ繊維を使用する場合でもコストが最大の課題であった。
 これまでに、チラノ繊維の特徴を十分生かせる製造プロセスの改良技術を開発することによって、従来比約3~4割程度のコスト削減を達成させているが、同社では、さらに今回の需要増に見合った増産計画を早期に立ち上げることにより、大幅な事業機会の拡大につながるとして期待している。