2000年03月23日 |
三菱化学、高出力光増幅器用980nm半導体レーザーを開発・実用化 |
KDD研究所と共同開発/陸上用とあわせ2002年度に200億円事業へ |
【カテゴリー】:新製品/新技術 【関連企業・団体】:三菱化学 |
三菱化学は23日、KDD研究所と共同で次世代のテラビット級光海底ケーブル方式に必要な大容量光増幅器用の波長980nm(ナノメーター)の半導体レーザーについて、キンクフリー出力500mW以上、最大光出力650mW以上と従来品の2倍以上の高出力特性を持つ半導体レーザーの開発に成功した、と発表した。また改定用の半導体レーザーモジュールでは、光ファイバーにレーザー光を入れる結合効率を67%から75%以上に高めるとともに、高い信頼性を有しながら長期間300mW以上の高出力で使用を可能とした。この結果、今後の大容量期間伝送網の実現が可能になると期待される。 三菱化学は、これまでにもKDD研究所と980nm半導体レーザーの開発を行っており、すでに太平洋や大西洋の大洋横断光海底ケーブルとして世界に先駆け実用化されている。その一例としてKDD海底ケーブルシステム株式会社がシステムを敷設している日米間のPC-1、Japan-US、米欧間のTAT-14などがあるが、これらのシステムでは980nm半導体レーザーを用いた増幅方式で、1ファイバー当たり16波長の光を使い、毎秒160ギガビットの大容量伝送(電話回線約200万回線相当)を実現している。 一方で、インターネット通信の爆発的普及とサービス多様化にともない、国際通信を含めた基幹伝送網では、さらに一桁以上大きい伝送容量を持つテラビット級の超大容量伝送路の構築が必要となってきている。例えば各家庭で双方向に動画をやり取りするようになると、現在使われている回線で焼く1,000回線が必要になるとされている。超大容量の光伝送網実現のためには、現在使われている光増幅器の光源である980nm半導体レーザーを高出力化し、伝送する光の波長数を増加させる必要があり、世界的にも高出力化競争が激化している。これらの実現のため三菱化学は、KDD研究所と高出力化の開発を進めてきていた。 今回の開発の成果は、(1)レーザー構造の最適化や共振器長の最適化などの改良により、半導体レーザーの出力が電流に対し直線的に伸びていく最大出力(キンクフリー出力)500mW以上、最大650mW以上を実現、(2)海底用の半導体レーザーモジュールにおいて、出力の向上にあわせて光ファイバーへ有効にレーザー光を入れる技術開発を進め、従来67%程度であった結合効率を75%以上に大幅改善、(3)これらの結果、25年以上無故障という、最も高い信頼性が要求される海底光通信においても、レーザーチップとして300mW以上、レーザーモジュールとして200mW以上の高出力化の信頼性にめどをつけたことなど。 三菱化学は、現在筑波事業所において海底ケーブル用980nm半導体レーザーモジュールを製造しているが、順次今回開発した高出力製品に切り替えていく予定。また海底ケーブル用だけでなく、現在急速に市場が拡大している陸上通信用の980nm半導体レーザーモジュールについても、今年秋からの市場投入を目指し、筑波事業所で製造設備の新設を進めている。また同社は、今後のインターネットを中心に大幅な需要拡大が期待される光通信分野を重点分野の一つに位置付けており、今回の高出力980nm半導体レーザーの開発・実用化、また陸上通信用半導体レーザーモジュール事業を3年後となる2002年度に200億円規模の事業として育成していく方針。 なお、今回の共同開発の成果については、3月28日から青山学院大学で開催される第47回応用物理学関係連合講演会で発表を予定している。 |