2000年03月03日 |
スチレン系樹脂の透明グレード、需給超タイトな状況続く |
各社とも供給力なし/増産には慎重姿勢 |
【カテゴリー】:原料/樹脂/化成品 【関連企業・団体】:大日本インキ化学工業、テクノポリマー、電気化学工業、東レ |
HIPS(耐衝撃性ポリスチレン)およびABS樹脂の透明グレードは、スケルトン・ブームの影響で依然として超タイトな状態が続いている。しかし、透明グレードを生産しているPS、ABS樹脂メーカーは各社とも増産余力がなく、今後も需給は極めて逼迫した状況が続く見通しだ。 透明グレードのアジア市況は、昨年11月の時点でHIがトン当たり1,700~1,800ドル、ABS樹脂が2,200~2,300ドルと汎用グレードに比べ2倍以上の高値で推移していたが、11月に一旦急落、同月末から再び上昇したものの、需給タイトであるにもかかわらずほぼ同レベルとなっている。 これらの背景には、透明グレードの生産メーカーが日本に集中していることが大きい。現在アジア地域で透明グレードを生産しているのは、HIではA&Mスチレン、電気化学工業、大日本インキ化学工業(DIC)など、ABS樹脂ではテクノポリマー、電気化学工業、東レ、日本エイアンドエルなどがあり、このほか海外では唯一FCFC(台湾化学繊維)がABS樹脂を手がけているのみで、年初以降の円高の影響から、価格が横滑りしているのが現状で、最近になって価格を引き上げる動きが出てきている。 一方で、透明グレードに対する需要は、当初のパソコンおよび周辺機器から、日用品や雑貨分野などへの拡大が急速に進んでおり、汎用グレードとの価格差が縮まっているとはいえ、メーカーにとってはドル箱的存在であっても良いはずだが、実際には増産が難しいのが現状だ。 透明グレードの生産は、汎用グレードに比べ重合時間が長くなるため、様々なグレードを切り替えて生産しているメーカーにとっては、透明グレードの生産を増やすと他のグレードの生産に大きな影響が出てくることになる。このためユーザーからの引き合いは依然として強いものの、新規の話は断っているというメーカーが多い。 透明グレードを生産するメーカーが日本に集中している以上、内需に見合った生産体制を構築したPSメーカー、収益的に厳しい状況にあるABS樹脂メーカーにとっては、設備投資をともなう増産は、スケルトン・ブームがいつまで続くか分からないだけにリスクが高いと映っているようだ。 |