2000年02月02日
TEC、中期経営計画を見直し~2001年に黒字化目指す
2002年度の目標受注高1,630億円
【カテゴリー】:経営
【関連企業・団体】:東洋エンジニアリング

 東洋エンジニアリング(TEC)は1日、昨年4月に策定した「中期経営計画99」を全面的に見直し・強化した、と発表した。平成13年度(2001年度)には黒字化、安定的な利益体質に復帰する計画で、計画達成時期は平成14年度末。
 今回計画を見直した背景について、当初計画はすでに固定費削減などの効果が上がっているが、状況変化の激しさと速さはこれをはるかに上回り、受注力や収益力向上についての効果が見られないとし、特に事業全体の約80%を占めているプラント事業は、有力顧客の合従連衡による案件数の減少や、韓国勢の台頭など世界規模の競争激化にともない、受注量が大幅に減少しているうえ、薄利かつ大きなリスクテイクを強いられ、事業継続の危機的局面を迎えている、と分析。こうした業界構造の変化に対して、従来型モデルの改善だけでは不十分であり、事業構造的課題そのものに切り込んだ抜本的改革を行う必要があると判断、さらに現在の危機的事態を脱し、将来とも持続可能な規模を維持、発展していくためには、マーケットへの適応力を高めるよう自社の事業構造の大改革を断行し、十分な利益とキャッシュフローを確保できる体質への変革とリスクマネジメント能力の大幅強化を早急に実現しなければならないとしている。
 同社は、見直した中期計画の中で、「トランスナショナル企業」を目指す企業イメージに掲げている。世界の各拠点をグローバル・ネットワークで結んだ、高収益体質を有する国際的な一流エンジニアリング・コントラクターを目指す。また変革後の姿については、(1) 世界のTECグループ各拠点(米国/中南米、東南アジア、インド、欧州)はTECの知名度・ブランド力を活用し、各地域(Region)に密着したエリア・エンジニアリング・コントラクターとして独立採算で高収益を上げる。TECグループとしてこれらを有機的に結合した企業群としての地位を築く。(2) 顧客のニーズに対しては、日本を含む各拠点がそれぞれの強みを活かしつつ相互に連携し、グループを挙げて最適なソリューションを提供する。(3)TEC日本は、国内外各拠点の中核に位置付け、主に(a) 企業グループを統合する戦略や方針、その具体化の為の方策決定、実施、(b) 新規事業の立案、起業、投資等、(c)関連事業の持株会社としての機能及び、必要な事業の実施機能、(d)海外総合エンジニアリング関係事業、(日本が保有する付加価値の高い商品(技術やサービス)の輸出・商社などの海外開発事業への参加・日本のODAや制度金融(投融資)を利用する海外進出案件・その他、日本から実施したほうが良いと判断される事業や商談)、(e) 技術開発・集積の核としての機能などを担う。
 経営目標については、平成13年度より安定的な利益体質へ復帰、財務構造の健全化と復配を実現し、計画完成の目標年度である平成14年度以降正常化する計画。(TEC本体の主な経営指標および海外EPC拠点の売上高および経常利益目標は文末に掲載)
 今回の計画において、達成される主な構造改革(マーケット適応型企業への変革)は下記の通り。
 プラント事業では、(1)TECが強みを持つ商品(肥料・エチレン・石油化学・ソフトなど)、地域、顧客毎にマーケット・セグメントを分け、事業の選択と集中を図ることにより、事業リスクを軽減、あわせて利益率を向上させる。(2)営業受注活動の中心を、相対的に低リスク・安定利益の中小型規模案件にシフトする。中小型規模案件における競争力は同社の強みの一つであるが、Job実行体制の変革等これに一層の磨きをかける。大型案件は今後、アウトソーシングやアライアンス方式を中心に実行する。(3)トランスナショナルなグループ経営を早期に極大化するため、海外主要拠点に人的リソースの増強配備(計25名)を行う。(4)トランスナショナル体制の進展による事業モデルの改革にともない、要員スケールを約30%減量(820名体制から570名体制へ)するとともに、商品・事業戦略の転換に対応する最適な職能要員編成を早急に整備する。2年後には現行と比較して概ね4分の1の社員工数相当を海外主要拠点及び協力パートナーへシフトする。(5)変動費(直接原価)構造の改革、固定的コストの変動化を通じて、コスト競争力を強化する。すでに本社日本側では第一級のエンジニアを調達部門にシフト済みで、これに海外拠点ベースの調達力を組み合せることによって調達力の相乗的強化を図る。また半ば固定化している外注エンジニアリング人件費等についても、品質と競争力を保ちつつ、極力変動性を高める考え。
 産業システム事業については、(1)Consulting & Solutionサービス事業への本質的的転換を図り、IT/通信技術と生産技術の融合商品を営業展開する。(2)プラント事業から要員を増強し全体要員数を拡大する(現行120名体制から160名体制へ)。これにより現在まだ小規模である海外進出支援事業に、プラント事業で培われた海外施設ノウハウ・地域ノウハウが相乗的に加わることになる。(3)同時に、海外主要拠点に産業システム事業出身者を派遣・常駐させ、営業力を強化する。
 原子力・電力事業は、(1)ハード案件は特定顧客向けに特化し、業務の重心をACT事業(Advanced Computer Technology、業務高度化サービス)、原子力発電所の運用管理・運転シミュレータ・電力ERP等のソフト事業へ転換する。そのための要員を増強する。(2)環境、廃棄物処理、遮蔽などの高度技術、廃炉技術等につき、コンサルティング事業を拡大する。
 IT事業では、(1) 子会社である東洋ビジネスエンジニアリングをTEC圏のIT事業の中核として更に業容拡大し、株式の公開を目指す。なお同社は事業として既にERP(Enterprise Resource Planning)によるビジネスエンジニアリング、サプライ・チェーン・マネジメント/物流管理/電子商取引(EC)システムの構築とコンサルティング、インターネットを利用したネットワーク・サイバー・サービス事業などの事業を手がけている。(2)上記子会社の要員増強のためプラント事業部門を中心とする要員40名を公募制によりシフトする。(3)また、当社本体においても、産業システム事業部、原子力・電力事業部にそれぞれプラント事業部門から公募した要員を充て、IT関連技術の育成、事業化を図る。同時に当社プラント部門においても、IT関連技術を用いたいわゆる「プラントIT」商品の育成、事業化を図るなどを行い、TECの強みであるITを全社的に強化する。
 このほか要員計画・人事制度については、(1)平成12年度・13年度において全社の約4分の1に相当する社内外シフトを断行し、事業と収益構造の転換、ならびに固定費の削減を図る。(2)その結果、平成13年度末時点で社員数900名体制となるが、海外拠点の人的リソース(合計約1,500名規模)との連携を図り、グループ全体としては業務遂行能力を維持・拡大、「日本発の事業」から、「世界発の事業」への構造変革を行う。(3) 人事システムを見直し、市場価値に連動し、能力・成果主義を大胆に取りいれた新人事・処遇制度を実施する。
 最後に関連会社については、(1)各関連会社機能と自社機能の相関・位置づけの再定義を行い、再編・統廃合と選択的な増強を図る。(2)テックマスターズエンジニアリング(TMEC)では、集積された経験工学としてのプラント・エンジニアリングへの知見、ノウハウを活用し、コンサルティング、PMC業務などソリューション・サービス志向の業務も拡大する。

TEC本体の主な経営指標(平成14年度)
受注高     1,630億円
売上高     1,813億円
営業利益       42億円
経常利益       28億円
税引後当期利益    28億円
期末社員数      900人

分野別受注高
プラント    1,290億円
産業システム    250億円
原子力・電力     90億円
 合  計   1,630億円

海外EPC拠点(※)の売上高および経常利益目標(平成14年度)
売上高       500億円
経常利益       50億円
※Toyo-Thai Corp.Ltd.(タイ)、Toyo Engineering Corp.(韓国)、Toyo Engineering & Construction Sdn.Bhd.(マレーシア)

各年度要員計画(単位:人、H11-13、H10-13はそれぞれ増減人数)
(年度末ベース、平成10年度は実績、平成13年度末達成を目標)
        H10  H11  H12  H13 H11-13 H10-13
プラント    970  820  650  570  ▲250  ▲400
産業システム  130  120  140  160  40  30
IT(※)   130                 ▲130
原子力・電力  60  70  90  90  20  30
本社スタッフ  140  110  100  80  ▲30  ▲60
 合  計  1,430 1,120  980  900  ▲220  ▲530
※IT事業は平成11年7月に東洋ビジネスエンジニアリング(TBE)に移管