2000年01月13日
三井化学、三井製薬を日本シエ-リングに譲渡
シェーリンググループに統合~国内治療薬分野で地位強化
【カテゴリー】:経営
【関連企業・団体】:三井化学

 三井化学と日本シエーリングは12日、日本シエーリングが三井製薬工業の発行済株式の全株を買い取ることで合意、同日付で契約書に調印した、と発表した。三井化学が三井製薬に出資している三井グループの株式を一度買い取り100%子会社化する過程を経て、今年3月末に譲渡を完了する予定で、その後9~12ヶ月の間にライセンス譲渡などの手続きを行う。
 三井製薬は、1971年8月に三井化学(旧三井東圧化学)の全額出資により設立、1972年には三井グループ各社の出資協力を得ている。1999年3月期の医薬品売上高は120億円で、従業員数は650名(うちMR250名、製造70名)。
 日本シエーリングは、画像診断薬事業が売上高全体の約80%を占め、日本におけるトップメーカーであるが、今回の買収により治療薬事業の比率を拡大、事業のバランスを改善する方針で、売上高についても1999年度の総額516億円から2005年には784億円(単独では629億円)、2007年には同900億円への拡大を目指す。

 シエーリング側、三井化学側それぞれの会見の要旨は次の通り。
○親会社独シエーリングAG・ジョゼッペ・ビタ会長
 シエーリングの世界戦略のもと、日本において、日本シエーリングと三井製薬両社の統合により、事業を相互補完することで、シエーリングはもとより三井製薬の社員の皆様および関係者の皆様にも意義深くかつ多角的な利益を生み出すと考えている。日本シエーリングは治療薬領域に大きな豊富を抱いており、三井製薬との協力によりその存在を著しく拡大させる絶好の機会となるだろう。また両社の戦略領域は共通しており、共に補完・補強していけることから、両者は戦略的な適合性を有していると確信している。

○三井化学・中西宏幸社長
 三井製薬について、この間三井化学は同社を通じた医薬事業の育成・拡大に最大限の努力を傾注してきたが、昨今の医薬業界における競争の激化、また急激な国際化の進展の中にあって、現在の同社の事業規模では単独で生き残ることは困難との経営判断に至り、事業売却をも含めた内外有力企業との提携を模索していた。三井化学としては、これまで長年にわたり経営資源を注入し、培ってきた三井製薬における新薬の研究開発・登録、製造・販売等のポテンシャルおよび社員の能力を今後とも有効に活かして行くためには、今回の決断が最善と判断した。三井製薬がシエーリンググループの一員として、日本シエーリングとの相乗効果を発揮し、同グループの日本における治療薬事業の拡充に大きく寄与することを期待するとともに、三井製薬の経営陣および従業員にとっても、より強力な経営基盤の下で、持てるポテンシャルを最大限に発揮する場が得られるものと確信している。

○日本シエーリング・ヨルグ・グラウマン社長
 1952年に創業した当社にとって、本日は歴史上大きな転換期となる日である。今回の買収がもたらす効果は、単に売上高や製品ラインアップを拡大するだけでなく、シエーリンググループにおいて化合物を早期に市場へ導入することができるなどの効果も大きい。三井製薬は大手メーカーが開発に失敗してきた化合物の開発に成功してきた会社であり、同社が特化してきた腫瘍領域、循環器系、中枢神経系分野は、当社の戦略領域とマッチするものである。日本は、シエーリンググループの売上高の約12%占めており、鍵となる市場である。またフィメルヘルス領域でも主要メーカーとなるべく努力していくが、これと平行して新たな領域に参入していく必要がある。このため今回とは別件で、日本において放射性医薬品の領域でも買収計画を持っている。

○三井製薬工業・菅沼俊夫社長
 最近の医薬事業を取り巻く環境は、薬剤費抑制策の浸透と、臨床開発のスピードアップを目指した海外臨床の進展等、予想以上に激しく厳しいものがある。当社は新薬創出メーカーとしての地歩を築くべく、28年余の歴史を刻んできたが、厳しい環境下で医薬企業として生き残っていくためには、膨大な研究開発費を必要とするが、その先行投資に耐えうる売上規模や企業基盤を残念ながら確保しておらず、パイプラインが上市されるまでの暫くの間どう凌ぐか苦慮していた。今回のシエーリンググループ傘下入りに向けた株式譲渡は、同グループが日本で拡大しようとしている治療薬分野に、当社が長年培ってきた腫瘍、循環器系そして中枢神経系が正に適合するものであり、当社の専門知識と経験が役立つばかりでなく、売上規模の拡大と、緒についた臨床開発の海外展開の更なる進展が期待され、グループの一員として業容拡大を担う機会を得たものと考えている。日本の医薬業界は戦後の長く続いた安定成長の終焉とともに、競争の激化と急激な国際化の進展という荒波にもまれており、国際的には当たり前となっている合従連衡の時代に入りつつあり、従来の発想では生き残ることができない。今回の株式譲渡は事業の継続にとっても、社員にとっても最善の選択であると確信している。