2000年01月11日 |
DIC、コーツ買収完了を機に新中計の基本方針を発表 |
経営効率向上/財務体質改善/経営バランスを健全化 |
【カテゴリー】:経営 【関連企業・団体】:大日本インキ化学工業 |
大日本インキ化学工業(DIC)は11日、昨年12月に発表した仏トタルフィナのインキ事業部門であるコーツ社の買収完了を機に、3ヵ年の中期経営計画(2000年3月期~2003年3月期)について、基本方針を明らかにした。経営指標にはROE(株主資本利益率)を採用、現在の4.8%から2003年3月期には12.7%以上と大幅な向上を目指す。会見に臨んだ奥村晃三社長は、”企業価値の増大を進めることが企業の使命”とし、今回の中期計画を”新たな飛躍への挑戦であり、いかに収益性を向上させるか”という点に注力していく方針を示した。 企業価値を高めるための経営基本方針として同社は、「経営効率を高めるとともに財務体質を改善し、健全な経営バランスを構築」することをテーマに、(1)DICグループの経営戦略一体化、生産・技術・購買面などのシナジー効果を最大化、(2)技術が平準化した製品は、大規模集約化あるいは撤退など事業の選択を推進、(3)グループのコアコンピタンスに適合する新たなビジネスチャンスに経営資源を集中し、安定的成長と収益力拡大を実現、(4)社会の個性化に対応し、メーカー主導型から顧客に問題解決策を提供する提案型に事業をシフト、の4つを掲げている。 新中計の経営目標では、ROEを経営指標とし、連結ベースで現在(1999年3月期)の4.8%から、2003年3月期には12.7%(増資ありの場合、増資なしの場合は16.1%)と2.6~3.4倍に拡大、ROA(総資産事業利益率)も4.2%から6.5%へ向上させる方針。また売上高は9,840億円から1兆700億円、営業利益は454億円から700億円への拡大を目指す。なおこれらの前提条件として、コーツ社の資産は2000年3月期から、損益は2001年3月期から算入すること、2001年3月以降の為替レートを1ドル=105円としている。また同社は、昨年500億円の新株式発行登録を申請しており、2001年12月までに増資が行われればROEがさらに向上するほか、推定512億円の退職給付債務処理については、2年以内の償却を検討中(ただし今回1年の一括処理と仮定して試算)、ROE上昇分のうち2.5%は2001年3月期から導入される為替換算調整の資本組入にともなう株主資本の減少によるものであるとしている。 同社は、昨年12月31日に34億フラン(約544億円)で世界3位のインキ会社であるコーツ社の買収を完了した。その効果については、営業利益の上乗せ(高シェア得意先への売上減を含む)などによる直接効果として42億円、生産・販売体制の見直しや有機顔料・樹脂の自家消費量増加、PS版販路拡大によるプラス効果、さらに原材料のバーゲニングパワーのアップなどシナジー効果として69億円の計111億円を見込んでいる。さらに長期的にはグローバルコンペティションへの対応、世界で同時に進む技術革新への対応、技術・生産プロセスの強化など長期的な効果も追及していく。また買収により欧州における印刷インキのシェアは現在の28%から38%に拡大するほか、手薄だったインド・南アジアやオセアニア地域でもシェアを有することになる。なお買収後の運営については、販売・技術サービスは現行組織を数年継続、生産・購買は欧州・アジア地域を中心に最適化し、欧米はサンケミカルがアジア地域はDIC中心に運営し、コーツ社は欧州中心に運営していく。 事業基盤強化策について、グラフィックアーツ関連分野はいわゆる汎用分野で100枚以上の多量印刷に対応した印刷インキ分野では年平均2%(うち日米欧は1%、開発途上国は8%)を見込む一方で、今後は情報化の進展とともに100枚水準の少量印刷であるデジタル素材分野の需要はグローバル市場で大幅な成長を期待しており、大豆インキなど環境対応型素材への転換などを進めながら対応していく考え。 事業体制の効率化では、2001年3月に尼崎工場(兵庫県尼崎市)、2002年3月には蕨工場(埼玉県蕨市)の閉鎖を予定しており、両工場の閉鎖でキャッシュイン(売却額-撤去費用)は150億円超を期待している。また海外ではコーツ社買収にともなう事業の統廃合やライヒホールド社の再構築を進めていく。また有利子負債計画については、1999年3月期の6,205億円から、2003年3月期には5,690億円と、515億円削減する計画。 今後の事業領域として経営資源を重点的に投入していく分野として、電子印刷素材、環境対応樹脂(水星・UV)、液晶と周辺材料、機能性顔料と色剤、情報関連などを挙げており、水性/UV/大豆油インキやジェットインキ、液晶材料、CD/DVDコート剤などの開発・製品化を加速する。 これらの結果、単体の営業利益は固定費用の削減により1999年3月期の110億円が2003年3月期には195億円と増加する見込みで、部門別ではその他が23億円と変化しないものの、グラフィックが75億円から101億円、ポリマ関連が37億円から89億円、高分子機能材が7億円から17億円となる。また連結では、グラフィックがサンケミカルの増益基調維持拡大、東南アジアの業績伸長・回復などで38億円、ポリマ部門もライヒホールド社に加え東南アジアや国内子会社の増益により64億円の増加を見込んでいる。 |