1999年12月21日 |
化学技術戦略会議「企業は競争力つけ、コア技術集中を」 |
2010年の目標、基盤技術の整備と環境調和型技術の追求 |
【カテゴリー】:行政/団体 【関連企業・団体】:昭和電工、三井化学 |
政府の国家産業技術戦略検討会(吉川弘之日本学術会議会長を座長に産官学代表で構成)は先に2010年をにらんだ「国家産業技術戦略」策定を決めたが、このうちバイオ、情報など9分野の分野別産業技術戦略がそれぞれの戦略推進会議メンバーによってとりまとめられた。 化学分野の技術戦略は、村田一昭和電工会長を議長、幸田重教三井化学会長と桜井英樹東京理科大教授を副議長とする「化学技術戦略推進会議」によって検討され、このほどその報告がまとまった。 21日、通産省化学課の西出徹雄課長が記者会見して説明した。 報告は、(1)化学産業における産業競争力と技術の現状(2)化学技術分野において技術革新を阻害している問題点(3)今後の展望と戦略、の3項からなっている。(1)では「化学技術の優劣が化学産業の優劣を大きく左右する」と、技術開発が競争力を強めていく上で重要だとの点を強調。しかし、「類似の事業を小規模多数の企業が行なうという産業構造」の現状から「個々の企業の各分野における研究開発費は諸外国に比べても小規模なものになっている」としている。 (2)の技術革新阻害要因としては〓企業、大学、国立研究機関等が問題意識を共有しないまま個別に技術開発を行っている〓人材育成が未整備で、これからは専門知識に精通するだけでなく、周辺知識についても理解する能力をもつ人材を育てる必要があるなどの点を指摘、さらにこれまでの化学技術に関する国家プロジェクトのあり方について、「成果が試作に成功した等の報告にとどまり革新的技術開発の観点からは必ずしも十分でなかったという意見が多い」「民間のニーズが十分に反映されず、インセンティブが働いていないのが原因」と厳しい指摘が行われた。 (3)の今後の展望と戦略では、これまでの化学技術の特徴と21世紀に想定される化学技術の特徴を比較、今後期待されるシーズ技術を紹介したあと、「2010年の目標」として〓新物質の創製、変換、新プロセス、新製品の開発を推進するとともに化学技術開発に共通な基盤技術を整備することにより、研究効率、生産効率の大幅な向上を図る。〓環境調和型化学技術を極限まで追求するとともに化学物質の適切な管理により、安全で安心な質の高い社会を実現する。〓各種データベース等の知的基盤化学技術者教育の再構築による人的基盤整備、革新的な技術開発が可能となる基盤を整備する、をあげている。 また、企業に対しては「一層の事業再編等を実施することにより低収益体制の改善を図り、将来の競争力強化の糧ととなる研究開発のための資源を確保する。研究開発投資のコア技術への集中を進め、産官学の連携による基盤技術を基礎として得意とする製品開発等を積極的に進めることが必要である」と説いている。 |