2002年01月31日
水素の貯蔵・輸送を容易に  燃料電池の実用化にプラス
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:三菱化学

 水素を使った燃料電池が自動車や住宅、工業用などに利用される時代が目前意迫っているが、これに並行して水素の貯蔵・供給を支援する有機ハイドライド方式の実用化計画が話題を集めている。
 
 北海道大学の市川勝教授によると、シクロヘキサン、デカリンなどの芳香族化合物の脱水素反応および水素化反応を利用した水素の貯蔵・供給方式(有機ハイドライド方式)が、これまでのやり方に比べ、高速、低コストでできるとしている。
 
 同教授はこの方式によって水素をガソリンや他の化石燃料と同じように輸送すれば、ガソリンスタンド設備の若干の改修など既存インフラで、自動車の燃料補給地や家庭などへの供給が可能になるとして、昨年、三菱化学、積水化学、東京ガス、大阪ガスなどと共同で「有機ハイドライド利用システム研究会(会長・柏木孝夫東京農工大大学院教授)」を設立したが、このプロジェクトを今後さらに強力に推進したい意向である。
 
 水素の貯蔵・供給のプロセスは天然ガスなどを高性能触媒ゼオライト1kgに通すことで水素を毎時2,000リットル、ナフタレンを100~200グラムつくり、さらにナフタレンに150℃の熱を加えることでデカリンに換える。 そして水素を使用したい地域までデカリンを運び、現地で、改めて熱を加えることで水素を取り出す。
 
 市川教授は天然ガスからのメタン直接改質水素製造技術も開発している。
今、世界で注目を集めているガソリンやメタノールから水素を抽出するガソリン改質やメタノール改質はCOやCO2排出の問題がある。

 デカリンを媒体とした水素エネルギーシステムが確立すると全く新しいエネルギーシステムの構築が可能になる。水素のコストも在来法の半分ていどと試算されている。また、水素貯蔵合金を使用する自動車はその設備が500kgにも及ぶ難点があり、有機ハイドライド方式に優位性がある。
 
 なお、自動車業界ではダイムラー・クライスラーが今年後半にメタノールからの抽出水素を使った乗用車の実用化をめざしている。