1999年11月30日
電気化学の矢野恒夫社長、中間期業績や今後の事業方針など語る
特殊樹脂/電子材料/特殊混和剤の3分野に資源を集中
【カテゴリー】:経営
【関連企業・団体】:大洋塩ビ、デンカポリマー、電気化学工業、東ソー、東洋スチレン、三井化学

 電気化学工業の矢野恒夫社長は29日記者会見を行い、1999年9月中間期の業績や今後の事業方針などについて、大要次のように語った。

 一、1999年9月中間期の業績は、売上高が前期比14億円減の875億円となったが、営業利益は21億円増加し74億円となった。21億円の内訳については、販売価格下落でマイナス51億円となったものの、営業努力もあって販売数量はプラス30億円、原材料単価下落がプラス28億円で相殺された。このほか引き続き物流費・販管費・固定費削減に努めプラス14億円、繰延研究費償却(制度改正)がマイナス7億円、金融収支改善でプラス2億円、有価証券譲渡(評価)損でプラス59億円、事業整理損ほかでマイナス5億円、法人税などでマイナス17億円となった。
 一、通期の業績予測については、東南アジアの景気回復や製品市況の上昇などプラス要因はあるものの、一方で中国の買い控えや旧正月の需要減退も予想されることから、通期の見通しは前回発表時と変えていない(予想数値は売上高1,700億円、営業利益140億円、経常利益100億円、当期純利益30億円)。また8月に下期予算を作成した際にはナフサ価格も1万8,500た円を前提としており、実体とギャップがあるのも確かであるが、10月の業績は予算を上回るペースを記録している。
 一、当社はこの7~8年間、不採算事業からの撤退と整理、コスト構造の抜本的見直し、関係会社の整理・構造改善、汎用製品事業のアライアンスなど、リストラ策の推進と経営再構築を進めてきた。当社の事業は間口が広いものの、今後は(1)成熟分野における自社資源・技術による競争優位性と安定収益性の維持、(2)成長市場分野への重点化の2点を基本戦略としていく。
 一、(1)について具体的には、カーバイド法によるクロロプレンゴム、セメントなどは、自家水力発電や工場隣接地の石灰石利用など競争力の面で有利な点を生かしていく。またアセチレンブラック(AB)はシンガポールと大牟田で展開しているが、東南アジアにおける市場開発の進展と域内経済の回復により、両拠点ともフル生産となっている。またシンガポールでは、今後導電性ABの事業化を検討している。
 一、(2)では電子材料関係、特殊混和材、特殊機能樹脂の強化と樹脂加工事業の展開の3分野に資源を集中する考えだ。電子材料のうち溶融シリカはチップの薄肉化ニーズの高まりにともない微粉化、球状化が進んでいるが、球状タイプの製品は収率が低い。このため現在は初めてEMCメーカーに値上げをお願いしている。あわせて12月には大牟田で2系列、来年2月にはシンガポールで2系列を増設する予定だ。また電子包装材料は導電性タイプで世界の50%以上のシェアを有しているが、材料は当初の塩ビからポリスチレン(PS)、ABS樹脂、クリアレンと変わってきている。電子基板事業は、当社の窒化技術を生かして、現時点では脆さなどの問題があるものの、将来はエンジンなどの構造材に展開していきたい。
 一、特殊混和材のうち特にナトミックは、フル生産となっている。これは第二東名の工事や新幹線向けなどの需要によるものだ。第二東名の総距離約530キロメートルの約3分の1はトンネルであり、かつ従来の2車線に対し3車線となるため、断面積が倍以上に増える事が大きい。また補修事業もすでに施工例が50~60件となっているが、現在建設省や運輸省、JR、JHなどが7つのチームを作って補修材料や補修方法の検討を行っており、遅くとも今年度中に結論を出す方針で、当社のNCT工法にも期待がかかる。また、アジアの通貨危機以降中断していたアジアへの展開も今後再開していきたい。
 一、透明ポリマーやクリアレン、OPS(二軸延伸ポリスチレン)など特殊機能樹脂も需要が増加している。東洋スチレンへの設備移管が完了した後に残るバッチ式の重合缶や旧サンスチレンの重合設備などを用いて増強を検討していきたい。また樹脂加工事業は、10月1日付けでデンカポリマーと千葉デンカポリマーを統合、本社に一時移管した製造部門も含め統合した。需要の60%を占める関東において、千葉工場を中心にデンカ化工などを含めた自社一環体制を持っていることを強みに拡大を進めていきたい。
 一、デンカシンガポールのPS事業は、今年4~5月にようやく黒字化したが、その後原料の高騰が続いていることもあって、厳しい状況であるが、原料価格も下がりつつあり、近い将来は明るさが見えてくるだろう。また現在の生産能力は年産6万トンであるが、近いうちに7万2,000トンに引き上げる。さらに現在隣接地で用地の取得交渉を進めており、次期計画としてMS樹脂などをはじめとする透明ポリマーの事業化を検討している。
 一、大洋塩ビの再建策については、東ソー、三井化学との3社で大筋合意し、現在各種のチェック作業を行っているが、今後は東ソーが責任を持って運営することになるだろう。また当社は今期中に38億円の累損処理する考えだ。