2002年06月14日
環境省、エンドクリンの「優先10物質」の実験・試験結果まとむ
人の健康影響に関する低用量での作用は認められないと報告
【カテゴリー】:環境/安全
【関連企業・団体】:環境省

 環境省環境保健部は14日、「内分泌撹乱化学物質問題検討会」の平成14年度第1回会合を開き、内分泌撹乱作用が疑われている化学物質のうちのいわゆる「優先10物質」の有害性評価の結果を報告した。
 
 これは、環境省が「環境ホルモン戦略計画 SPEED’98」に掲載している合計65物質のうち優先的に有害性評価を行なう必要があると判断した合計10物質についてこれまで同省が実施してきた動物実験と試験管内試験の結果を報告し、意見を聞いたもの。
 人の健康と生態系への影響を評価するのがこれらの実験・試験の目的で、対象に取り上げられたのはトリブチルスズ、フタル酸ジ-n-ブチル、オクタクロロスチレン、ベンゾフェノン、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸エステルジ-2-エチルヘキシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジエチル、アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル、トリフェニルスズ--の10物質であった。
 
 この日明らかにされた同省の評価結果のうち「人の健康に関する有害性評価」に関しては、「いずれの物質についても低用量での明らかな内分泌撹乱作用は認められなかった」と結論されている。ただし、「一部の物質についてはmRNA発現量や血中ホルモン濃度等に有意差のある変化がみろめられているので、今後の知見の集積の中で注視していく必要がある」とも付言されている。また、高用量に関しては「一般毒性と考えられる影響が認められた」と表現、内分泌撹乱作用は突き止められなかったことを明らかにしてもいる。
 
 一方、「生態系(魚類)への影響の有害性評価」に関しては、「4-オクチルフェノールを加えてトリブチルスズを外した10物質を対象にメダカを用いたビテロジェニン産生試験とパーシャルライフ試験を行なった結果を整理して報告した。
 それによると、4-オクチルフェノールについて「(1)魚類の女性ホルモン受容体との強い結合性(2)肝臓中ビテロジェニン濃度の上昇(3)精巣卵の出現(4)産卵数・受精率の低下--が見られ、魚類に対して内分泌撹乱作用を有することが確認できた」と報告している。なた、フタル酸ジ-n-ブチル、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、フタル酸ジシクロヘキシル、アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル、ベンゾフェノンの5物質については「頻度は低いものの精巣卵の出現が確認された」としている。残りの4物質に関しては「明らかな内分泌撹乱作用は認められなかった」と報告している。
 この日の同検討会では、これらの報告を基本的に了承し、同省がこの内容を国の内外に公表することを認めた。