2002年01月28日
住友化学、トランスジェニック社と「遺伝子破壊マウスの機能情報」で独占契約
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:住友化学、住友製薬

 住友化学は28日、新興バイオベンチャーである「トランスジェニック社」と遺伝子破壊マウスから得られる遺伝子機能情報を独占的に閲覧するための契約を締結したと発表した。
 
 トランスジェニックが作製する遺伝子破壊マウスのうち1,000系統(種類)について、破壊された遺伝子の情報およびその中から個々のマウスの形態、行動、病理学的・生化学的データなど遺伝子の機能に関する情報の開示を受ける。これに基づき、住友化学と住友製薬が共同運営しているゲノム科学研究所が中心となり、独自の遺伝子機能解析研究を進め、新規創薬ターゲットおよびライフサイエンス研究に有用なものについては、特許をトランスジェニックと共同出願しマウスを独占的に使用する権利を取得する。
 
 遺伝子研究は、ヒトゲノムの配列解読がほぼ終り、機能解析などポストゲノム時代に突入、酵母、培養細胞、線虫などを用いたさまざまな遺伝子機能解析手法が世界中で開発されているが、ヒトと遺伝子レベルでの相同性が極めて高いマウスが最も注目されている。遺伝子破壊マウスを用いる方法は、遺伝子の機能を哺乳動物の生体内で調べるため、直接的でかつ決定的な解析結果が得られ、最も優れた個体(全身)レベルでの機能解析方法と考えられている。だが、遺伝子破壊マウスの作製と供給の困難さから、大量の遺伝子の機能解析手段として採用するのは困難だった。

 トランスジェニックは東京海上火災、日本生命、政府系投資機関等が出資するバイオンチャーで、熊本大学発生医学研究センターの山村研一教授らが発明した技術を事業化し、世界的にもトップクラスの効率と規模で、遺伝子破壊マウスの作製と破壊遺伝子の機能解析を行っている。同技術は、置換型遺伝子トラップ法と呼ばれる方法で、ランダムに遺伝子破壊マウスを作製すると同時に、破壊された遺伝子の配列を簡便に解析できるという特長を持っている。これにより、新規遺伝子の発見が可能になり、遺伝子破壊マウスの表現型を詳細に解析することで個体(全身)レベルでの遺伝子機能解析を進めることができる。

 住友化学、住友製薬の両社は、ゲノム研究の重要性にいち早く注目し、国内外の研究機関とも提携して研究体制を整備、アグロバイオ研究、安全性研究など広範な分野でゲノム研究に取り組んでいる。ゲノム創薬研究では、共同でゲノム科学研究所を2000年に設立し、ゲノミクス、バイオインフォマテイクス、プロテオミクスを駆使して先端的な研究を行っている。また、ジーンロジック社(GeneLogicInc.)、インサイト・ゲノミクス社(IncyteGenomics,Inc.)、ライフスパン・バイオサイエンシーズ社(LifbSpanBioSciencesInc.)などの海外ベンチャー企業と提携し、遺伝子発現情報データ、ゲノム配列データ、GPCR(受容体)発現部位データなどの遺伝子関連データベースを活用しており、すでに幾つかの新規創薬標的候補遺伝子を見出している。これらの標的候補遺伝子の妥当性の検証も行っている。


<株式会社トランスジェニックの概要次の通り>
設立年月 :1998年4月
社  長 :井出剛氏
本社所在地:熊本県熊本市中央街2・11サンニッセイビル4階
資本金 :7億3,950万円
売上高 :約3.5億円
社員数 :約50人
主な事業:抗体試薬、遺伝子破壊マウス