2002年07月17日
ANのアジア価格、7月分はトン800ドル超えに
米国の供給力の縮小で需給が一層逼迫
【カテゴリー】:市況
【関連企業・団体】:旭化成、昭和電工

 旭化成、昭和電工などアクリロニトリル(AN)メーカーによると、アジア地域におけるANのコントラクトものの7月の成約価格はついにトン当たりCFR800ドルの大台に乗った。安いケースで同800ドル、高値は同810ドルとなっている。6月に比べると同20〜30ドルの続騰となる。今年1〜3月期の平均に対比すると、同250〜260ドルの値上がりである。
 
 今年春以降、毎月のように底上げされてきているわけだが、これは、全世界的な需給の逼迫を背景に、日本、韓国、台湾の極東3国のANメーカー各社が原料価格の大幅アップ分を製品価格に転嫁すべくユーザーの説得を繰り返してきたことによるもの。

 もともとアジア地域では供給力が著しく不足しており、これまではそのギャップを米国のANメーカー数社が埋めるパターンが続いてきた。しかし、昨年の市況の大幅下落で事業に行き詰まった米・スターリングケミカルが今年初頭以降長期にわたって年産36万tプラントの運転を休止したままの状態にあることや、他のANメーカーの定修が春に集中したことなどから、今年上期のアジア地域の需給はかつてないタイトな状態に陥っている。
 
 旭化成の調べによると、現在における全世界のANの総設備能力はネームプレートベースで年産581万2,000t、実質生産能力は500万t強という。一方の需要量もほぼ500万tで、世界全体のマクロバランスは概ね均衡しているといえる。しかしアジア地域の需給バランスは、生産能力が210万tと昨年並みにとどっまているのに対して需要量は238万tに拡大すると見られているので、明らかに供給力不足となる。
 この半年近く続いた価格是正はこうした事情を背景に実現したもの。ただし、ANメーカーでは、現在の価格ではまだ原料の高騰分を転嫁し切れていないので、8月にはさらに底上げしたいとしている。