2002年09月30日
三菱化学、有機EL材料を来年中に製品化
低分子系に徹底、リン光式も導入
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:三洋電機、東北パイオニア、パイオニア、三菱化学

 三菱化学は有機EL(エレクトロルミネッセンス)材料の研究開発でまず低分子系にしぼり込み、第2段階で発光層の材料を蛍光からリン光に切り換える方針を明らかにした。
 
 低分子系の材料では同社の強味である発光層のドーパント(染料)やホール輸送層でのオーガニックオートコンダクター(光半導体)、電子輸送層でのプラスチック材料(大阪大学と提携)などをフルに活用して、発光層の寿命改良などを急ぐ意向である。
 
 同社ではこれらの材料を総合的に開発して、来年末か2004年初めまでには有機ELディスプレイの材料としての製品化を進めたいとしている。
 
 有機ELにはキャリア注入型の素子が使われる。用いられる素子の有機化合物には低分子系と高分子系がある。有機ELディスプレイを製品化するためのキーテクノロジーは、素子そのものの発光特性の向上と、EL素子をパネル化するためのパターニング技術としての陰極隔壁の導入、封止技術にある。
 
 三菱化学では高分子系の有機EL材料によるディスプレイが、発光層(色)の寿命がまだ短かく、色調も弱いなどのため、低分子系に徹して実用化を急ぐことになったものである。ただ同社では高分子系、低分子系のハイブリック型も考えられるので、この点、高分子系の研究も続けたいという。
 
 また、発光率を向上させるためにリン光方式をとり入れるのはUDC(ユニバーサル・ディスプレイ・コーポレーション)が「3重項」と呼ばれる技術で蛍光の3倍の明るさを達成したため、この技術を導入したもので、他の有機EL材料メーカーと歩調を合わせる形となる。
 
 なお、低分子系の有機ELディスプレイ(コダック方式)はガラス基板に陽極、バッファ層、ホール輸送層、発光層(+ドーパント)、電子輸送層、陰極を組み合わせてつくる。東北パイオニア、三洋電機などがこのディスプレイを採用している。