2002年10月04日
東レ、 世界初「遺伝子組換えカイコ絹糸から生理活性タンパク質」産生
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:東レ

東レは4日、独立行政法人・農業生物資源研究所と共同で、遺伝子情報を組換えたカイコ(トランスジェニックカイコ)から、生理活性タンパク質を絹糸中に産生する基本技術の確立に世界で初めて成功したと発表した。今後同技術を利用して、生理活性タンパク質の高効率生産プロセス実用化を目指す。

 今回開発した技術は、カイコの「絹糸腺」(絹糸を作る器官)のもつ優れたタンパク質合成能力に着目し、農業生物資源研究所のトランスジェニックカイコ作製技術を組み合わせて確立した。生理活性タンパク質の一例として、ネコインターフェロンについて検討した結果、カイコの絹糸腺で働きやすい構造に改良したネコインターフェロン遺伝子をカイコのゲノムに挿入した「トランスジェニックカイコ」を作製することにより、絹糸腺組織、さらには絹糸自体に、生理活性を保持したネコインターフェロンを産生させることに成功した。カイコが吐出する絹糸そのものに、生理活性タンパク質の成分が含まれ、その絹糸を回収、精製して製剤化するという、従来の常識では考えられなかった、画期的な生産プロセスとして期待されるとしている。

(1)繭を回収することで、目的の生理活性タンパク質が得られる合理的なプロセスであること。
(2)トランスジェニックカイコは、生理活性タンパク質を産生する性質を子孫に伝えることができるため、毎回遺伝子組換えを行う必要がなく、普通のカイコを飼育する場合と同じように容易に大量飼育ができる。
(3)余分な夾雑タンパク質が少ない絹糸中に、目的の生理活性タンパク質を産生させることができるため、精製が容易である、などの特長がある。
 
 同社はこれまで、ヒトインターフェロン-β"フエロン"を世界に先駈けて製品化するなど、高いバイオ技術を保有しており、中でも、カイコを用いた「組換えタンパク質」の産生技術は、同社の特徴あるバイオ技術の一つとして位置づけ、研究に力を入れてきた。
 
ニュースリリース参照
http://www.chem-t.com/cgi-bin/fax/search.cgi?CODE=251