2002年10月22日
JSRの「アートン」、LCD位相差フィルム用が伸びる
【カテゴリー】:経営
【関連企業・団体】:JSR

 JSRは有機EL(エレクトロルミネッセンス)、液晶ディスプレイ(LCD)の材料分野への進出を計画、発光層をはじめ、拡散シート、プリズムシートなどの材料の製品化を急いでいるが、LCDの光学材料に使われるC5系の耐熱透明樹脂の需要が好調に伸びているため、まず同樹脂の設備を現在の年産1,000トンから3,000トンに大幅増強することになった。2004年末の完成をめざす。
 
 同社は1997年末に千葉工場に同樹脂の設備を完成「アートン」の商品名で発売した。アートンはC5留分を原料にジシクロペンタジェンを経て樹脂化される。熱変形温度が164℃と高く、透明性もよい。とくに吸水性がメタアクリル(MMA)樹脂の5分の1ていどと低いため、ゆがみが少ない。
 
 一方、LCDは大型化、高精細化、省電力化が進み、これに並行して耐熱性、透明性、位相差防止などの性能向上が求められてきた。LCDは大型化が進むにつれて位相差の問題が大きくなり、横から見た場合の画像のダブリをどう解決するかの課題をかかえてきた。アートンはどのような波長にも位相差の変化をおこさせない特徴があり、位相差フィルムや導光板、透明電導フィルムなどに需要が伸びている。
 
 アートンはノルボルネンと呼ばれる構造で、光学レンズなどの用途にも向いており、DVD用などにも使われる見通し。なお、同社ではアートンの増設に資金約20億円を計上している。