2002年11月20日
三井化学中西社長が会見、当面の経営戦略を説明
大阪工場のプロピレンセンター化等で石化事業を変革
【カテゴリー】:経営
【関連企業・団体】:住友化学、三井化学

 三井化学の中西宏幸社長は20日、記者会見して、住友化学工業との統合に向けての同社の当面の経営戦略を説明した。
 
 はじめに同社長は、「(1)エチレンセンターからプロピレンセンターへの転換(2)高コスト構造の変革によるコスト削減(3)得意技術の強化による差別化と集中--の三つのテーマを柱に石油化学事業を変革していく」と発言して石化事業の思い切った変革を当面の経営戦略の基本に置いていく考えを強調、継いでそれぞれのテーマ別に変革の具体策を披露した。三つのテーマのうちの「得意技術の強化による差別化と集中」の実現に当たっては、フェノキシイミン触媒などの新触媒の開発と活用によって新規高性能・高機能ポリオレフィンを相次いで工業化するなどで狙いを着実に果たしていきたいと述べた。
 
 中西社長の発言内容は概要次の通り。
 ▽当社の石油化学事業を取り巻く環境は大きく変化しつつある。プロピレンの需給タイト化、中国市場の拡大、中東のエタンベースのエチレンのアジアへの流入、巨大欧米資本のアジアへの本格参入、日本におけるエチレンの供給過多--などが例として挙げられる。
 特に軽視できないのは、日本の石化の場合小型で効率の悪い設備が乱立していること、インフラのコストがアジア諸国に比べて極めて高いこと、エチレンの生産能力が内需を大きく上回っており今後さらにその格差が広がる見通しにあること--などの点だ。反面、プロピレンの需要は拡大が見込まれ需給はタイト化が進むと予想される。
 ▽こうした中で当社が住友化学工業との統合に向けて実現すべき経営戦略は「大阪工場のプロピレンセンターへの転換」「高コスト構造の変革によるコスト削減」「得意技術の強化による差別化と集中」--の3点を柱にした石油化学事業の変革だ。
 ▽大阪工場のプロピレンセンター化は、ルンマスのOCU技術を採用してプロピレンの生産能力を現在の年28万tから42万tに拡大することで実現する。04年8月に完工の予定だ。FCCプロピレンを加えると大阪工場のプロピレンの供給量は62万tになる。これによって現在のプロピレン不足の悩みから脱却でき、加えて、PPやフェノールなどプロピレン誘導品全体の国際的な需要の拡大に適切に対応していけることになる。
 ▽コストの削減の大きな柱は、PP設備のスクラップ・アンド・ビルドだ。3プラント合計年産22万8,000t能力の現有設備を1プラント30万t設備に置き換えることにしており、03年9月には完工の予定だ。新プラントでの銘柄数は、現在の50種類を大きく削減して5種類にとどめる。こうしたことからPPのコストを製造と物流の両面で年間57億円削減できる見通しにある。
 このほか、サプライチェーンマネージメントの変革で300億円のコスト削減を実現する。あらゆるインベントリーの削減と同業他社との地域連携によって05年までに目標をクリアしていく。
 差別化と集中の実現に当たっては、差別化製品創出のための触媒開発の促進、アロマ系製品の大型化技術の開発促進、アプリケーション技術の応用による差別化製品の創出、フェノキシイミン触媒による高機能樹脂の開発、メタロセン触媒PEのハイヤーオレフィン品種の育成によるプレミアム市場の形成、PPの品質強化による自動車市場における地位の向上、メタロセン触媒によるエラストマーの新規用途開拓、新触媒によるPET樹脂事業の強化--などに特に力を入れていく。
に当社は触媒開発では世界をリードしていると自負している。この強みをさらに伸ばしていくことによって新規高性能・高機能ポリオレフィンを開発するなどでポリマーサイエンスの領域を一層広げていきたい。
 ▽一方、地球環境との調和も重要課題の1つと考えている。高活性触媒などによる原料原単位やエネルギー原単位や排出物原単位の向上、高強度・軽量樹脂やパウダー成形技術などによるエネルギーの低減、生分解プラスチックの開発による有害物質の低減--などの対策を着実に実行していくことで目的を達成していくことにしている。