10月1日から「産業再生法」がスタートするが、この議論のさなか、石化協の幸田重教会長が「石化業界には過剰設備はない」とマスコミに語ったのを聞いて、思いを新たにしている。
私は公正取引委員会(事務局長)の職を離れて早や10年になるが、昭和50年代に産業界に巻き起こった構造不況対策、わけても「産構法」をめぐる白熱した論議のことは、いまも記憶にある。
確かあのときは、石油化学など7業種が特定産業に指定され、石油化学ではエチレン設備が過剰だということで約200万トン分の設備処理が行われた。また、ポリオレフィンと塩ビ業界で4つの共販会社が設立され、販売の集約化、一体化が図られた。
さて、その結果はどうだったのか。もちろんそれなりに成果はあったと思うが、その後は5年の期限を待たずに法律が廃止されたこと、共販会社も全社解散したこと、などを考え合わせれば、評価は多分に分かれようが、経営者にとっては貴重な体験であったであろう。
その一つは、「数(かず)論」にあると思う。プラントの数が多すぎる、メーカーの数が多すぎる、といった「数論」は、あまり意味のある議論とは思えない。ましてやその数を国が決めるなどといったことがあっては、それこそナンセンスといえよう。
石化業界はそれぞれの経営判断で企業合併や分社化、再編といった、グローバル化に向けた取り組みをやっておられる。「数論」で設備過剰かどうかを議論する前に、自分で世界の動きを視野に入れ、どこと組むかといったことが重要である。もしあの産構法がなかったら、合併や再編はもっと早い時期に実現していたであろう。このような思いは私のみではあるまい。
石化業界各社が体験したことが産業再生法を前にしての幸田会長のマスコミ発言に現れているのであろう。経営者にとっては厳しいなかにも重大な決断の一こまである。
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