「石油価格がどこまで上がるのか、下がるのか、どのようなきっかけがあるのか」—これは世界的な関心事である。4月の第2週に官、産、シンクタンクなどを代表する国内の専門家のディスカッションを開いた。
「4月のはじめまでは米国がイラク攻撃にふみ切るのは時間の問題というところまできていた。しかしイスラエルの強烈なパレスチナ攻撃に対し、国連がブレーキをかけたあたりから米国のテロ対策の姿勢に変化がでた。ブッシュ大統領のシャロン・イスラエル首相への占領地区からの軍の早期撤退要求である。これによって米国のイラク攻撃に時間がかかるだろう」とする見方では一致していた。
とはいえ、米国はイラク攻撃を繰り延べたり、中止することになったわけではないので、石油をめぐる生産、消費両国の緊張はいぜん続いている。
4月の第2週の石油価格は1バレル当たり26ドル前後で推移した。この価格水準には「米国のイラク攻撃が織り込まれている」というのが、石油関係業界の見方。
2000年の1バレル37ドルはともかく、イラク問題次第では石油のさらなる高騰が予測される。
石油が手に入らない状態をどう考え、どう対応するか。
昨年9月11日のニューヨーク世界貿易センタービル爆破いらいアジア経済に無関心だった米国の態度が変った。安全保障の観点からではあるが、まずシーレーンの安全確保、そして石油備蓄、パイプライン敷設などに耳をかたむけ、行動しようとしている。
また、アジア各国の石油危機に対する問題意識も共通の視点からとらえるようになってきた。韓国、台湾、中国、日本の北東アジア4カ国で石油危機の対策で話し合う動きをみせ、アセアン諸国も接触しはじめているという。
インドも関心をもち、中東からもアジアの仲間として話し合いに参加したいとの意向がよせられている。中東が自らアジアで石油備蓄を検討しているとのウワサもある。
北東アジアでは中国の出方が注目されていたが「ともに協力しあって考える」方針と伝えられ、残る3カ国もホッとしている。
中国は1993年から石油輸入国となった。今後の急速な経済の伸びを予測すると石油備蓄を含め中国の動きは波乱含みである。
北東アジアでは今後、欧米に対抗するパイプラインが必要とする声もある。北米は52万キロ、欧州が22万キロのパイプラインを保有しているのに対し、ほとんどゼロの状態だからである。
ともかく1日500万バレルの石油を使い、その86%を中東に依存しているわが国として、石油危機回避の対策を講じねばならない。
エクソン、シェルなどとの共同開発を進めているサハリンの天然ガス計画や新規のバイオマスエタノール、それになんといっても原子力発電の増強を進めねばなるまい。サハリンは日本から2000キロ、中東の1万3000キロの6分の1ぐらいの距離である。
エネルギー源の多様化、地域の多様化が重要な課題である。
最後にイラクに対する米国の攻撃はとりやめことこそ重要との意見。
その理由として、フセイン政権のあとどのような政権ができるかである。連邦制や民族別行政、アナーキーなどが考えられるとしても安定性の保証がない。
また、イラクとイランの微妙な関係。イランは少なくともイラクの存続に協力する意向が強く、米国との協力は未知数だというのである。(佐藤光翔)
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