「目指すのは、着実な成長と高収益会社」

 

電気化学工業社長・川端世輝氏

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 「今年は、3カ年計画の最終年度。まずこれを目標通り仕上げたい」と川端新社長。「抱負」としては新鮮味に乏しいが、この目標の一つに念願の「営業利益率、10%以上」がある。しかも計画は、専務時代に晝間前社長(現会長)のもとで立てた。その意味では、社長に就任しても戸惑いはない。「着実に成長する、高収益会社を目指す」という言葉にも、気負いはない。

— 社長に就任されて、専務時代と変わったのは。

 忙しさだ。専務のころは自分でスケジュールを決めて動いていたが、今は周りが決めてしまう。社長の仕事がこんなに忙しいとは思っていなかった。

— 決算も好調で、4期連続の増収増益です。5期目への期待も大きいです。

 確かに数字としては悪くはない。だが当社は10年前の矢野さん(恒夫氏、前会長)時代からいろいろな運動をタイムリーにやってきた。10年前の1996年というと、価格破壊がいわれた時代だが、当社も業績が思わしくない。そこでトータル・コストを10%下げようと「TC−10」運動というのをやった。コスト全体が1000億円なら、100億円の削減となる。人件費から償却費から、それこそすべてのコスト構造を見直し改めてきた。一つには、これが成功した。財務体質も大きく改善された。

— あの当時は他社とのアライアンスも積極的でした。

 そう。石油化学系はボリュームはあっても、収益は惨たんたるものだった。安定して利益が出るものというと、結局、自家発電や石灰石・カーバイドにつながる事業が中心だった。肥料やクロロプレンなどは今でも安定した収益をあげている。

 石化系は、原料が上がり価格は下がるの繰り返しで、メーカーとしてはどうしても規模を追うしかない。これではだめだというので、汎用品を中心にアライアンスを行った。塩ビ事業を大洋塩ビに移し、スチレンでは新日鐵化学、ダイセル化学と東洋スチレンを設立した。

— 規模を追うのではなく、特化品でいこうと。

 当社は、機能性の高い商品を沢山持っている。規模を追うのは、そういう製品にしようと特化製品の強化に力を入れてきた。

 そのあと、晝間社長時代に「革新22」をやった。社内の組織や制度を見直し、業務改革をやろうという運動だ。さらに04年度から「ニューステージ2006」(NS06)をスタートさせた。

 売上高営業利益率:10%以上、自己資本比率:50%以上、有利子負債:650億円以下と、具体的に目標をあげて取り組んでいる。今年度はこの最終年度に当たる。

— 目標達成の見通しはついていますか。

 いや、まだだ。営業利益率は9%まできたが、あと1%足りない。今は「OP+1 」という超短期目標の運動をやっている。「あと1%アップ、がんばろう」というわけだ。

— 新社長としての抱負、次の経営目標は、どうなりますか。

 その前に、これまでやってきた運動を仕上げる。今年は最終年度なので、きちんとやり遂げる。それが大事だと。このNS06は、もともと私が直接担当してきた仕事だ。これをきちっと締めくくってから、次の目標を考える。

— これまでの重点3分野、機能性樹脂、電子材料、樹脂加工は変わりませんか。

 それは基本で変わらない。どうやって効率よく各部門を拡大強化していくかだ。一部はすでに着手している。電子材料でいうと、各工場でばらばらにやっていた研究や開発などの業務を渋川工場に集中した。生産部門も集めた。市場のニーズにより迅速、的確に対応していこうというわけだ。

 機能性樹脂も現在規模を拡大中だ。シンガポールには超高分子ポリスチレン「MW 」と透明ポリマー「MS樹脂」、それに収縮ラベル向け「クリアレン」の各プラントを建設し、今年下期本格スタートする。トータル規模は10万トンから一挙25万トンになる。
 
 樹脂加工部門は、旧東洋化学の合併後、組織体制づくりをやってきた。製品の種類も包装材料、電気絶縁テープ、包装テープ、雨どい、合繊かつらと多いが、体制ができたので、これからは工場を整備し最適生産を図っていきたい。3つの重点分野のうち2つは新しい形ができている。残りの樹脂加工もこれから整ってくるということで、基盤は固まる。

— 新しい技術、製品はでてきませんか。

 大型商品というものは、そういくつも出るものではない。しかし既存商品の中にも、市場の評価が高く、有望なものは多い。アルミナ短繊維とか、特殊合成ゴムの「ER」などは、販売も好調だ。「ER」は耐熱と耐油特性を持っている。このため自動車用途で伸びている。
 
 そういうことで当社は「クラスター作戦」で行こうと思っている。大型商品でなくていい。年間4〜5億円規模のものをいくつも開発し「房」にしていきたい。

— 基盤事業がしっかりしているのは強みですね。

 当社が増収増益を続けられた背景には石灰、カーバイド系事業の伸長がある。一時は限界かなどと言われたものだ。今はとくにクロロプレンが注目されている。海外のメーカーが撤退したこともあって供給が間に合わない。

 このため青海工場でクロロプレンの能力拡大を考えている。自家発電力に余裕があるかどうか。アセチレン発生機なども必要になるが、青海には豊富な石灰石の山がある。こういった石灰石や水力を中心とした自家発電設備を持っている強みをもっと経営に活かして生きたい。
 
 医薬品の「スベニール」も引き続き順調で、能力は限界にきている。今600万〜700万本分の設備を持っているが、1,000万本に対応できる設備に拡張したい。
 
 電子材料では封止剤の溶融シリカが、環境対応型ということで需要が伸びている。大牟田とシンガポールに工場があり、現在世界でもトップシェアだが、ピークがきても対応できるように検討しておきたい。

— デンカにどんな将来像を描いていますか。今後、社員には何を期待しますか。

 当社は「着実に成長する、高収益会社」を目指す。そのためには、際立ってつよいものを持ち、十分な供給力があることが条件となる。
 
 今年は創立92年目で100周年が目の前にきている。そこで、この機会に工場のインフラ投資をやりたい。環境や災害、保安関係の設備を整備し強化する。今までは走りに走ってきたが、振り返る時期にきている。そしてさらに次の100年に備える。
 
 当社の社員は全員まじめで、仕事にも愚直に取り組んでいる。精神面もしっかりしている。しかし、指示待ちはよくない。積極的に、非凡に実行することを望みたい。それが経営目標の達成にもつながるからだ。