━社長就任は97年、これまでに会社はどう変わりましたか。 |
中期計画にもあるように、新しい考え方としてマーケット・イン志向、利益志向、さらに計画や目標にもっとこだわろうと言ってきた。それこそ毎日“口にタコ”ができるほど言い続け、徹底してきたつもりだ。
当社はこれまで“技術のクレハ”といわれてきたが、確かに社内にはメーカーオリエンテッドの文化が根付いてきたようなところがある。しかし、モノ不足の時代だったら何でも売れたからよかったが、いまは逆にモノは余っている。お客のニーズに合ったものをつくっていかないと、商品は売れないし、付加価値もついてこない。技術中心のシーズ志向の時代は終わったのではないか。そこで私は進路を変えようとハンドルを切ったわけだ。 |
━製品の幅が広いだけに大変なのでは。
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うちはそれこそ川上の塩ビ・ソーダから川下は家庭用品まで幅広い製品をもっている。そこで基礎原料の段階からダウンストリームのことをよく知った上で生産していく。最終商品の方も、お客の意向をよくつかみ、少しでも付加価値をつけて売っていく。とにかく設備は余分にはもたない。もう右肩上がりの時代ではない。 |
━重点事業分野にどんなものがありますか。。 |
柱は3本あって、1つは機能材料分野、次に樹脂加工品、3っ目は医薬・農薬の分野だ。
初めの機能材料にはPPSとかフッ化ビニリデン、炭素材、光学材料、樹脂改質材などが入る。いずれも電子・電気、情報、建材などの産業とつながる重要な部門だ。これまでに400〜500億円と相当の設備投資をしてきた。このためまだ十分な利益を上げるところまできていないが、これから伸びると楽しみにしている。 |
━樹脂加工品でも『クレラップ』など特徴のある商品をもっています。 |
塩化ビニリデンは特異な樹脂で、当社はクレラップやハム・ソーセージなどの食品包装材として商品化し、自分で構築したチャンネルで売ってきた。食品包装材は中国でも生産しているが、バリア性に優れ、食品の保存性がいいというので好評で量も非常に伸びている。中国とは食品包装材で30年のつき合いがある。ここへきて経済が発展し、需要も急増している。将来はベトナムとかミャンマーなどさらに先の国でも展開できそうだ。
『クレラップ』の需要も堅調だ。ダイオキシン問題からいろいろ言われたが、ダイオキシンというのは、もともと炭素、酸素、水素、塩素があり、焼却条件が悪ければ塩ビに限らず紙でも生ごみでもどんなものからでも出てくる。ダイオキシンは焼却炉さえきちんとしていれば解決できる問題だ。だから悪いのは塩ビではない、ダイオキシンなのだ、ということを皆さんによくご理解いただきたい。 |
━医薬・農薬分野ではどんな取り組みを。 |
農薬で新しいものが出てきた。殺菌剤だが、今まで日本の農薬は、イネを対象にしたものが多かった。今度当社はムギの病害に効く農薬を開発した。このためフランス、ドイツ、イギリスなどムギを生産している各国で認可を受け、現在売っている。バナナとか他の植物にも有効性が確認されているので将来まだ広がりそうだ。医薬も『クレスチン』が発売から20年経ち、末端ベースで一時は500億円あった三共(株)の売り上げが100億円以下まで落ち込んだが、最近再び見直しをしてもらう努力を続けた結果、その効果が出始めてきている。
もう1つ、慢性腎不全用剤「クレメジン」を平成3年に発売した。また、昨年11月にはネコ用の腎臓薬も上市した。 |
━呉羽化学はグループ内のアライアンスにも力をいれてきました。 |
連結決算制度が導入されるので、グループ内の総合力を強化する必要がある。関係会社は約30社あるが、これらを生産会社、サービス会社、それ以外の出資会社と3つに分けて合理化、再編をやってきた。その結果、2つあったエンジニアリング会社を統合し「呉羽テクノエンジ」を設立した。また繊維部門は当社から「呉羽合繊」に営業を移管し、製販一体とした。自力でしっかりやってほしい。その点でいえば産業廃棄物処理業の「呉羽環境」は、すでにダイオキシンの出にくい新しい焼却炉を開発し、操業に入っている。
炉の温度を数秒で800℃に上げることができ、停めるときも直ぐ常温に戻る。ダイオキシンは中間の温度で発生するから、それを防ぐことができる。そういう画期的な技術だが、とにかく当社の関係会社はそれぞれよく頑張っていると思う。 |