━しかし、石油化学の世界では国際競争が一段と激しさを増しつつあります。分社化を機にどんな手を打っていきたいと。 |
体質をかなり強化できたとは言え、当社の場合もまだ事業の中心は、激しい国際競争が続くバルクケミカルとなっている。やはり、10年先さらには20年先を見つめた新しいポートフォリオに早急に変えていくことが必要だ。
ついては、高付加価値型製品事業の拡充が最大の課題だ。「旭化成ケミカルズ」の発足を機に、従来の“素材提供型の企業”から“高付加価値の製品なりシステムなりを提供する企業”へと脱皮していくようにしたい。
さいわい当社には、世の中のニーズにきちんと応えていける高付加価値製品が多い。エンジニアリング樹脂だけでなく、感光性樹脂、イオン交換膜、水処理フィルター等々多彩だ。これら単品として伸ばすだけでなく、他の様々な材料と組み合わせて新しいニーズによりきめ細かく対応していけるシステムに仕上げていくことで新しい領域を切り開いていくようにしたと考えている。 |
━売上の規模よりも収益を重視していくべきだということですか。
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その通りだ。現在は売上げ高の5〜6%の経常利益を上げればそれでよしとされているが、当面の目指すべき経常利益率は少なくとも8%であり、その先は10%であってしかるべきだ。それを実現するには、やはり売上げの半分以上を高付加価値製品で占めるように持っていく必要がある。むろん容易ではないが、ぜひ実現したい。 |
━いつの時点でそれを実現したいと考えていますか。 |
5年以内が目標だ。05年にはあるていどはっきりした姿を出せるようにしたいと考えている。 |
━そのためには研究開発力とマーケティング力の強化が不可欠です。 |
特にこれからの化学企業の行方を大きく左右するのはマーケティング力だ。素材メーカーの視点だけでマーケットを捉えていくと新しい市場は見つけられない。この点は十分認識してかかる必要がある。ただし、まったく新しいものを手がけようとしても効率が良くない。既存の技術や製品の枠を拡げることによってマーケットのニーズに十分応えうる製品やシステムを数多く開発していくこと、これが大切ではなかろうか。
伸ばすべき分野は、エレクトロニクス、ヘルスケア、環境、エネルギーの四つの分野と考える。先ほど述べたように、当社にはこれらの分野でも独自の基盤を構築していける機能を持つ製品がいくつも存在する。これらをうまく組み合わせることで開拓していけるマーケットはうんとあると確信している。 |
━一方のバルクケミカル部門には、どんなビジョンを。 |
基本は、コスト競争力を一段と強化してアジア地域全体で引き続きしっかりリーダーシップを発揮していくことだ。ANについてはこの春から稼動させている韓国・東西石油化学の新プラントの持つ強みを、またSMでは今年末に水島に増設する大型新鋭プラントの持ち味をそれぞれ十分に生かして中国をはじめとしたアジア地域全体における基盤をさらに強化していきたい。ANでは、東南アジアにプロパン法の新設備を建設することについてもさほど遠くない時期に結論を出すようにしたいと考えている。 |
━水島といえば、三菱化学との提携をどう考えていくかが注目されています。
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水島は、ただちにどこかとアライアンスしなければ自立していけないという脆弱な体質のコンビナートではない。それに、今年末にSMの年産33万tプラントが完成すると、水島のエチレンバランスはうんと良くなる。加えて、石油コンビナート高度統合運営技術組合の第2次計画に沿って三菱化学さんや新日本石油精製さんなどとともに未利用留分やユティリティなどの相互有効利用を進めていけば、さらに体質は強化できる。どうしても急いで提携話をまとめなければならないという状況にはない。
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━最後に事業全体の海外展開についてもひとこと。 |
SM、AN、PSといった汎用製品にとどまらず、エンジニアリング樹脂やPMMAなどの高機能製品もアジア地域で大きく伸ばしていきたい。現に、ポリアセタールやポリカーボネートなどが順調に育ちつつあり、さらにMMAの導光板などもアジア市場で大きく伸ばしていけると判断している。設備投資にも積極的に取り組んでいきたい。 |