プラ加工ビジネスの現状と当面の課題

 

出光ユニテック常務

市原 博雄 氏

 H.ICHIHARA

 出光石油化学の全額出資で4月1日に設立されたばかりのプラスチック加工メーカー「出光ユニテック」(社長=佐藤博・出光石油化学常務)による積極果敢な新製品の開発・上市活動が関係各方面の注目を集めている。出光石油化学と言えば、かねてからプラスチック加工事業についても極めて意欲的な取り組みを示してきたことで知られる。人材と資金を思いきって投入して独自の高機能型加工製品を相次いで開発し、わが国のプラスチック市場の拡大に大きく寄与してきた。「出光ユニテック」は、その出光石油化学が、加工製品事業の一層の飛躍を目的に、同社内の高機能型プラスチック加工製品の研究ならびに販売部門と、既存のプラ加工品製造会社「ユニ化工」とを統合し、独立別会社として発足させたもの。高付加価値型製品を多数品揃えしてスタートした同社だが、発足後も、矢継ぎ早に新製品を戦列に加えて市場対応能力の強化を図っている。そこで市原博雄・同社常務に同社が目指すプラ加工ビジネスのアウトラインとビヘイビアについて聞いてみた。

━先ずは、出光ユニテックの概要からご紹介いただきたい。

 設立は今年4月1日。資本金は3億円。出光石油化学が全株式を保有している。従業員数は約310人。東京本社のほか、大阪に支店を、また名古屋に営業所をそれぞれ開設している。工場は、千葉県山武郡と兵庫県姫路の二ヶ所。千葉県袖ヶ浦に商品開発センターも保有している。
 企業化製品は、高機能フィルム、高機能シート、不織布−−の3種類に大別できる。高機能フィルムでは、多層共押出キャストフィルム「ユニラックス」やプラスチックチャックテープ「プラロック」、二軸延伸ナイロンフィルム「ユニロン」「ユニアスロン」などが主要製品として挙げられる。また、高機能シートでは、高透明・高剛性PPシート「スーパーピュアレイ」、高透明・軟質POシート「ピュアソフティ」、多層共押出バリアシート「マルチレイ」「マジックトップ」などが、さらに不織布では、PPスパンボンド不織布「ストラテック」や機能性複合不織布「ストラマイティ」などが代表的な製品と言える。
 今年度の売上目標は240億円。経常利益は2億円を目標に掲げていく。

━スタートして2ヶ月が経過した現在の社内のムードはいかがですか。

 研究開発から製造・販売にいたるまでの一貫体制の新会社を作ってプラ加工事業に取り組むのは今回が初めてということもあって、緊張感が社の隅々まで浸透しており、社員のモラールは極めて高い。また各部門から選抜された社員の間には、ごく自然に一体感が醸成されてきてもいる。これには、全社員が、出光ユニテック設立の持つ意義を十分に認識し、同時に、明確な基本理念と共通の目的意識を持って仕事に励んでいることが大きく作用していると思う。若い人材が多数集まっているので全体の雰囲気も明るい。滑り出しのムードは上々と言ってよい。

━いまのお話の中の基本理念についてもう少し詳しい説明をお願いしたい。

 当社の基本理念は、独自の高度な技術で新しい価値・機能を備えた製品を創造していくことにある。常にユーザーの視点に立って世の中のニーズをよく見極め、ニーズに適合した価値の高い差別化製品を市場にできるだけ多く提供していくことがわれわれの使命と考えている。言葉を変えて言えば、“価値創造型企業として生きていく”ということだ。
 それには、末端市場の開拓のプロ集団であるユーザー業界の皆さん、すなわち二次、三次加工業界の方々から口を揃えて“高機能基材のプロ”と言っていただける存在にならねばならない。そうでないと、これからの厳しい生存競争の中で生き残っていけない。

━ついては、市場が求める高付加価値型の新商品をいかにタイムリーに開発・上市していくかが重要なポイントとなりますが、4月1日のスタート以降に発表した新製品はすでに6種を数えます。かなりの急ピッチと言えますね……。

 この二ヶ月間に上市した新製品を順を追って紹介すると、ヒートシール可能な積層不織布「ストラマイティMN」、高周波融着が可能な高透明・高光沢性軟質ポリオレフィンシート「ピュアソフティウェルダーグレード」、そして先週発表した高透明・高光沢性軟質ポリオレフィンシートの新品種4種、すなわち透明着色品種「ピュアソフティ透明着色グレード」、耐候性品種「ピュアソフティ耐候グレード」、紫外線カット品種「ピュアソフティ紫外線カットグレード」、抗菌性品種「ピュアソフティ抗菌グレード」の4種を合わせた計6品種となる。
 確かに少ない数ではない。しかし開発中の新製品や新品種の数はそれをはるかに超える。その中には、今年10月に予定されている「東京パック」の開催までにぜひ発表したいと考えているものが5〜6点ある。
 新製品の開発・上市は、当社のように誕生してまだ日が浅い企業にとっては特に重要だ。新製品の上市は、需要家筋に社名を覚えてもらうのにも最も大きな効果があると言えるからだ。当面、名刺がわりにしていきたい。

━新製品に対するユーザーの反応はいかがですか。

 おかげで極めて良好だ。予想していた以上に活発な引き合いと注文を受けている。それぞれの製品が持つ価値を需要家の皆さんがきちんと評価して下さっていることを肌で感じる。既存の製品についても、新体制への切り替えを機に発注を増やして下さるところが出てきている。

━しかしいまは変化の時代とあって、市場のニーズも目まぐるしく変わっていく。対応が大変だと思われますが……。

 高付加価値型の新製品も、ある程度時間が経てばありきたりの汎用製品になってしまう。それだけに、常に市場の動向に細かく目を配り、ニーズを先取りするかたちで絶え間なく新製品を開発していくことが大切だ。その場合、できるだけ需要家の皆さんと共同で多くの製品を開発していくことが重要となる。現在の当社の企業化製品のうちほぼ半分がそうした製品で占められているが、今後はその比率をもっと高めていきたい。全体の65%程度を共同開発製品で占めるように持っていきたいと考えている。
 ついては、営業部門が優れたマーケティング力を発揮していくことが不可欠の要件となる。営業部門は出来上がった製品を販売するだけでなく、新しい市場を開拓していく重要な役割を持つ。当社には、優れたシーズが豊富に存在している。特許件数もおよそ250を数える。そうした財産をフルに活用できるかどうかは、しっかりしたマーケティング力を発揮できるか否かにかかっている。さいわい、当社の営業部員はその点をしっかり自覚している。あとは着実に成果を上げていくことだ。

━企業化製品はこれからも押出製品に絞っていくのですか。

 当社の持つ強みを最大限に生かしていくには、やはり当社が得意とする多層・複合・延伸・結晶化コントロールーー等の技術を十分に活用した押出製品に的を絞っていくのが妥当と思う。ただし、市場はこれまでのメーンの食品包装分野に加えて環境対応製品分野にも大きくテリトリーを広げていく方針だ。狙いを達成していくには、研究開発に十分な資金を投入していくことも必要となる。そのためにも、マーケティング力を強化してきちんと利益を確保していけるようにしなければならない。

━中期の業績目標はどうなっていますか。
 平成15年には売上高300億円、経常利益15億円を目指すことにしている。