全社員が一体となって時代に即した最適事業構造の確立を


三井住友ポリオレフィン社長

榊 由之 氏

 

 三井化学、住友化学工業の両社のポリオレフィン部門の統合新会社「三井住友ポリオレフィン」が発足して1ヵ月強となった。世界有数の規模を持つ総合ポリオレフィン企業として再スタートした同社だけに、どのような統合効果をどういったタイミングで実現していくかが関係各方面から注目されている。そこで榊由之社長に基本理念と今後の行動計画について聞いてみた。「課題はいくつもあるが、基本は、事業構造を新しい時代のニーズに即したものに改革していくことにある。社員の意識は、これを早急に実現することで完全に一致しており、具体的なプラン作りも始まっている」ときっぱり言い切る。同社の動きからは当分目が離せない。

−−性格がかなり異なる両社のポリオレフィン部門の統合とあって、うまく融和していけるかどうかを心配する向きが周囲には少なくありませんが、実態はいかがでしょう。
 ご心配なく。お互いに長所を認めあい、全社員が一体感を持って仕事に取り組んでいるので社内の雰囲気もとてもいい。おいで下されば実感していただけると思う。
 もっとも、うまく融和するだけでは統合した意味がない。1プラス1が3にも4にもならなければ厳しさを増す一方の国際競争を勝ち抜いていけない。ついては、何事を決めるにもお互いにガンガン議論し合って正しい方向をきちんと見出すようにしていくことが大切だ。その場合忘れてならないのは、「三井住友化学」に取って何がプラスになるかを十分考えてかかることだ。さいわい、そうした意識はすでに社全体に浸透している。
−−日本のポリオレフィン企業がこれからの厳しい国際生存競争を生き抜いていくには、あらゆる面で思い切った自己改革が必要といえます。榊社長もその点をかねてから力説されているようですが、具体的にはどんな手を打っていくべきだとお考えですか。三井住友ポリオレフィン(以下・SMPO)の課題も合わせてご紹介下さい。
 先ずは、需要家の動向や市場全体の大きな流れを十分に把握した上で将来の最適事業構造を描き、それを実現するための方策を考えることが大切だ。これらの作業に当たっては、当然のことながら市場と直接の接点を持つ事業部門が生・販・研の全てにわたってリードし、企画や管理部門がそれをサポートしていくことが望ましい。
 これまでポリオレフィン業界の間には、社内事情をベースにした方針で、自社の製品が少しでも多く売れればよいとの考え方も多々見られた。このまままではいつまでたっても健全な商慣行や健全な事業運営は実現できず、結局は需要家のニーズにも対応していけない事業となってしまう。マーケットに接している事業部隊が進むべき方向をよく認識し、マーケットに働きかけることを通じて自らの事業を作り上げることが必要だ。SMPOの事業運営に当たってはこの点を徹底させたい。
−−おっしゃるような最適の事業戦略を練り上げ、実行に移していくには、国際的に通用する何らかの強みを持っていなければならないといえますが、SMPOの場合は何を目指していきますか。
 それはやはり、トップレベルのコスト競争力と技術開発力を持つことだ。国内でのコスト競争力の強化についてはプラントのS&B等が必要なのであるていど時間はかかるものの、汎用品分野で輸入品と競争できる体制は十分確立できると考えている。
 一方、技術開発力については、三井、住友両社の触媒技術やプロセス技術、さらには加工技術を総合活用していくことで世界トップのレベルに立てると判断している。こうした点から言っても、日本および海外でポリオレフィン事業を同時展開していくことは十分可能と考えている。
−−一方、当面の課題はやはりナフサの高騰に対処しての製品価格の修正ということになりますか。
 その通りだ。ここにきてのナフサの上がり幅は、当社の合理化努力では到底カバーできない規模となっている。このままでは大変な赤字を背負うことになる。ここはやはり、ナフサ・リンクを主体とした方式の価格政策をユーザー各社にお認めいただくほかない。
−−合理化についてはどんなプランがありますか。
 ありとあらゆる部門で徹底した合理化策を実施していくことにしており、2004年末までに合計260億円の合理化効果を上げる計画だ。
 すでに当社の場合は、統合に際して大幅な人員削減を実施している。営業部門と研究開発部門はいずれも3割削減し、管理部門は従来の半分に減らしている。これからは、S&Bを中心とする生産コストの合理化、さらには物流費等の一層の削減に焦点が移ることになる。統合によってはじめて実現できることになる合理化策が結構多いので努力のし甲斐がある。
−−ポリオレフィンの需要の展望についてもお聞きしたい。需要はまだ伸びていきますか。
 国内の需要には大きな期待を持てない。横這いで推移していくことになろう。そうした中でもきちんと利益を出していくことが大切で、ついては、加工業界の皆さんと共にもっともっと知恵を出し合っていきたいと考えている。
 一方、海外ではアジアを始め各地でまだまだ需要が伸びると見ている。中でもPPは自動車・工業材向けを中心に伸びを続けると予想している。PPの場合は原料価格の面で中東や欧米企業に対するハンディがないので、積極的な海外戦略を展開していきたい。特にコンパウンド事業の拡充には力を入れていきたいと考えている。
 これまでお話してきた考え方は全て社員にも伝えてあり、全社でベクトルを合わせて仕事に取り組んでいる。両親会社が統合する2003年10月までには、フォアランナーであるSMPOとして着実な成果を上げていきたい。