━昨年6月下旬のプレスカンファレンスで、BASFジャパンのポリマー事業戦略を明らかにされておりますが、その後の経過を含めもう少し詳しくお聞かせください。 |
昨年は、これまで日本で行ってきた、人員だけでなく様々なリストラクチャリングなどについて説明した。また、お客様の声にできるだけ耳を傾け、お客様が何を求めているかを把握することが重要である、といったことをお話したと思う。その甲斐もあって、お客様に我々の話すことに興味を持ってもらえるようになり、今では我々外資系企業を頼りにしてくれるようになっている。これは我々がテクニカル・サービスをきっちりとやっていること、またお客様がグローバルサプライヤーと仕事をすることにメリットを感じていることの表れだと考えている。
最近の日本のユーザー、特に自動車や電気・電子分野では、原材料の購入にあたりローカルのメーカー2社に加え、グローバルなメーカーを1社選ぶ傾向がある。世界に生産拠点があることには便利な点が数多くあるが、特に同一の品質のものが世界中で手に入るのは大きい。
我々BASFジャパンのポリマー本部は、実行すべきミッションというものを掲げている。とりわけ、自動車や包装、電気・電子分野のリーディングカンパニーにBASFの存在の大きさを認められること、またベストソリューションを提供し、日本のユーザーの成功と海外進出に貢献することは大事なことである。
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━今後のポリマー本部はどんなことを目指していきますか。 |
BASFジャパン・ポリマー本部が現在、第一の目標に掲げていることは、一言でいうと“スリム化”である。これは人員を減らすという意味ではなく、製品や顧客の数のスリム化に取り組むということである。在庫などを保管する倉庫費や運送料などを削減することができ、当社としても、またお客様にとってもメリットがある。
当社も過去にはエンプラで数多くの製品群を有していたが、今年2月末までにグレードのスリム化を完了、150グレードまで削減した。これからもコアな顧客に、コア製品を競争力ある価格で提供していきたい。また現在当社は、300キログラム以下の注文を扱っていない。これについては、ディストリビューター制を導入、2社に全て委託し、この2社が多くの小口注文をまとめ、配送からテクニカルサービスまで対応している。
社内には、もうこれ以上リストラする所はなくなったと言っている。今後も小口注文の比率を回数ベースで10%以下に押さえるよう努力するとともに、競合他社に比べもっと価格競争力をつけていきたい。
もう一つはeコマースだ。当社は世界的にも先駆者的立場にあるが、World Account.comという社内コードネームで現在、日本でも準備を進めている。これはいわゆるeマーケットプレースではない。今年の夏には汎用製品を対象に立ち上げる予定だ。 |
━では、樹脂ごとのお話を伺いたいと思います。2005年の目標として、日本市場においてPSやABS樹脂などの汎用樹脂では5%、エンプラで10%、スーパーエンプラで30%のシェアを獲得する、と話されていますが、汎用樹脂で5%という目標は、現在の輸入販売による体制で達成するには高いハードルだと思いますが…。 |
確かに輸入だけで実現するには厳しい目標かもしれない。パートナーを検討していることも事実だが、現在は話せる段階にはない。メリットがあれば取り組んでいきたいとは思っている。ただ、私自身は5%以上を実現する可能性もあると考えている。
供給面については、現在PSは韓国と中国から輸入しているが、先ごろ買収を発表したインドの拠点からも輸入する考えだ。これはコストリーダーシップを実現するためには必要なことだ。また、ABS樹脂は、韓国から輸入する体制に変わりはないが、先ごろメキシコでABS樹脂の新設備が完成し、欧米への供給を韓国から行う必要がなくなったため、韓国の拠点の供給余力は拡大している。 |
━次にPBTについてですが、欧米メーカーが打ち出した共同投資計画、また日本でも事業統合や新増設など、昨年から今年にかけて大きな動きが目立っています。BASFとしてはどのような戦略を考えていますか。 |
多くのメーカーが新増設を計画しているため、今後2〜3年はオーバーキャパとなり、競争が激化するだろう。また原料の調達が大きなポイントになる。PTA(高純度テレフタル酸)やDMT(ジメチルテレフタレート)は手に入りやすいが、1,4BD(ブタンジーオール)は難しい。当社は世界最大の1,4BDメーカーであり、これは強みになる。 |
━日本で御社のポリマー事業が大きくクローズアップされたきっかけの一つに、御社のナイロン6樹脂が1998年にトヨタ車のエアインテークマニホールドに採用されたことがあると思いますが、その後の採用は順調ですか? |
昨年発表されたホンダのシビックに、日本だけでなく欧米を含め採用された。またトヨタ車向けの採用も3〜4車種に拡大された。当社は、複雑で高度な分析力が必要なCAEのサービスを提供できることが大きな強みであり、また自動車メーカーの要求するデッドラインを守っている。日本で我々と同様のことをできるメーカーは、数社しかないだろう。
私は、1998年にエアインテークマニホールドの国内需要は数年の内に2万5,000トンに拡大すると予想していたが、ほぼその通りになってきた。自動車の軽量化に樹脂を採用するという動きは、欧州、米国に比べ遅れていると思われがちだが、これから日本でも採用が増え、欧米に追いついていくだろう。また今後は、シリンダーヘッドカバーやエンジンコンパートメントなど、モジュール化した製品の開発に取り組んでいきたい。
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━最後に、今後のご予定を教えてください。 |
非常に残念なことだが、私は4月1日付で本社に戻り、ドイツでプラスチックとは別の事業に携わることになった。日本では約3年間働いたことになるが、この間に多くの良い友人もできた。また、日本のお客様にも感謝したい。 |