━技術開発に取り組むことになった背景は...。 |
当社は、1962年いらい、自社工場で発生するポリエステル糸屑や北陸加工工場で排出される耳糸屑などPET100%の品物を回収し化学分解してDMTに戻すいわゆる原料リサイクル活動を実施してきた。しかし、循環型社会を目指す為には市場からいろんな製品を回収しリサイクルしなければならない。市場で使われているPET製品は、100%ではなく複合体として使われている。一番わかりやすい例は繊維製品である。綿などの他の繊維や、さらにはチャックやボタンなどの異物がけっこう多く混入してくるため分別に大変な手間がかかり、しかも、ポリエステル以外の添加剤や加工剤や染料なども含まれていて純度の高い原料への再生が困難といわれてきた。
しかし、PETボトルを始めポリエステル製品の需要と消費量が今後も増加していくのは確実であり、したがって、当社としてもより有効なリサイクル技術を確立することが必要と判断して研究に取り組んできた結果、今回の技術開発に成功した。こうした点からもお分かりのように、今回の技術は、当社が40年近く前に開発し、実用化してきた原料リサイクル技術をベースとし、そこに新しい技術を盛り込んだものと言うことができる。 |
━再生原料がPETボトルに使用されても衛生・安全上の問題はありませんか。 |
もともとポリエステルの重合方法には、問題視される有機化合物や無機化合物を含まない縮重合方法なので、問題は無いと考えられている。回収再生したDMTは念のため慎重に分析・試験してみたが問題はなかった。また、再生したDMTは、バージンのDMTと比較して99.99%同じ物性であるとの結果も出ている。このため、近くFDA(米国食品医薬品局)の承認も得たいと考えている。 |
━今後の工業化の計画も披露して下さい。 |
2002年3月までに徳山事業所内に年間3万トンの再生処理能力を持つ施設を整備し、PETボトルを主体に原料にリサイクルする設備を立ち上げる計画だ。この場合、年産約10万トン能力の既存のDMT装置を改造し、使用していく計画なので、早急に徳山市の環境審議会の認可を頂き、そして秋までには山口県から工事着工の許可をいただくようにしたい。 |
━PETボトルの場合、年間に処理できる本数はどれくらいになるのでしょう。 |
フル操業すれば、500ミリリットルボトル換算でおよそ10億本となる見込みだ。もっとも、狙い通りの稼動率を上げられるかどうかは、ひとえに住民の皆さんの分別排出のご努力と地方自治体の分別収集のご支援にかかっている。ついては、今回の私たちの計画に対する関係者の皆さんのご理解とご協力を切にお願いしたい。
|
━PETボトルと言えば、帝人はかねてからPETボトルの破砕品を繊維に再生するいわゆるマテリアルリサイクルにも相当力を入れてきましたね。 |
ポリエステル繊維へのリサイクルは1996年から実施しており、今年度の実績はおよそ3,000トンとなる見通しにある。現在は「エコペット」の商品名で市場の拡大を図っているが、今後さらに新しい商品を加えて2002年には年間6,500トンの規模に拡大したいと考えている。つまり、マテリアルとケミカルの二つの手法でPETボトルを始めとしたポリエステル製品の多くをリサイクルしていこうと考えているわけで、これによって、持続的発展が可能な循環型社会の形成に少しでも寄与したいというのが弊社の基本理念である。 |
━技術面での次の課題としては何が挙げられますか。 |
一つは、DMTをさらに化学反応させてPTA(高純度テレフタル酸)として再びPETボトルに再生することだ。基礎技術は確立でき、現在ベンチプラントの設計に入っているところだ。あとは経済性の確認が残っているが、私は十分いけると踏んでいる。その場合は第1期の設備の2倍程度を処理するプラント規模が必要となると今のところ考えている。したがって、"ボトルtoボトル"のリサイクルもそう遠くない日に実現できると思う。
二つめは、リサイクルが容易な商品の開発を積極的に行うことである。我々はこれを易リサイクル商品と呼んでいるが、この易リサイクル商品と今回の原料リサイクルを両輪として、ポリエステルにおいてより完全な循環社会を形成していきたい。 |