プラスチック廃棄物問題の新たな課題と取り組み

中央化学 社長

渡辺 浩二 氏

 K.WATANABE

 プラスチック製食品容器のトップメーカーである中央化学の渡辺浩二社長がこのほど勲四等瑞宝章を受章した。同容器事業を通してプラスチック業界と食品ならびに流通業界の発展に大きく寄与したというのが行政府による授章の趣旨。同容器の廃棄物問題の解決に対する意欲的な取り組みと豊富な実績が顕彰の重要なポイントとなった模様。環境・安全問題が全世界的に大きくクローズアップされている折だけにこの点は大きな意味を持つ。そこで渡辺さんに、今回の受章に対する所感に合わせて廃プラスチック対策のあり方についての意見を聞いてみた。

━はじめに、これまでのプラスチック製食品容器ビジネスの歩みをざっとご紹介下さい。

 昭和32年にシュウマイ用の "たれびん"をポリエチレンで作ったのがスタート台となった。さいわいこれが既存の陶器やガラス製品に置き換わって大きく伸びた。続いて手がけたのがPSPトレーである。"たれびん"の企業化に踏み切って3〜4年たった頃、米国で開発されたPSPが "第三の紙"と呼称されて世界各国で大きな話題を呼び始めた。そこで早速サンプルを入手し、加熱していろんなものに形を変えてみたところ思い通りのものに加工できることが分かったので、さしみ皿や折箱を作って上市した。これらがわが国における最初のPSP製食品容器となったわけだ。これも食品業界や流通業界の間で大変な人気を呼んだため、弁当箱、納豆容器——等々、付加価値の高い製品を次々と市場に投入して今日にいたっている。現在の企業化製品およそ4,000種に及んでいる。

━中央化学はもっぱら食品容器に的を絞ってきたわけですが、その理由は何ですか。

 容器・包装は生活必需品の一つであると同時に文化のバロメータでもある。しかも、日本人は優れた容器・包装に対して強いこだわりを示す。したがって、日本では文化の向上とともに優れた容器・包装は必ず伸びるというのがかねてからの私の信念であり、その信念をベースに、プラスチックの持つ特徴をフルに発揮できる高機能製品の開発と育成に専念してきたわけだ。

━企業化製品の主力はあくまでも高付加価値タイプなのですか。

 プラスチック食品容器も、他の製品同様にいわゆる"安かろう、悪かろう"と称されるタイプのものは自ずと短命に終わる。また、そこまで低品位のものでなくとも汎用品種と呼ばれるものに多くを依存していくと、景気全体が落ちこんだときに数量と価格の両面で大変な苦境に立たされることになる。このため当社では、時代のニーズを的確に捉えた当社特有の付加価値の高い製品をタイムリーに開発・上市していくことを経営の基本に置いてきた。この点は多くの需要家の皆さんからお認めいただいていると自負している。

━新製品の開発と一口に言っても、実現は容易でないように思えますが。

 要は、消費者の立場に立ってどんなものが欲しいかをよく考えることだ。そうすれば自ずと答えは見出せる。そんなに難しいことではない。

━ところで渡辺さんは、ずいぶん早くから企業化製品の廃棄物対策に意欲的に取り組んできましたが、その歩みと背景をざっとお話いただきたい。

 昭和40年当時、つまりいまから35年ほど前に自社工場内で発生するプラスチック加工くずの再利用に着手したのが始まりで、それが狙いとおりに実現できるようなったため次のステップとして、市場に排出される使用済み製品を対象に再利用技術の開発とその普及、ならびに易焼却処理タイプの製品の開発などに取り組み、現在にいたっている。これは、いずれ世間がプラスチックメーカーに対して企業責任の一つとしてしっかりした廃棄物対策の展開を強く求めるようにな見ていたからだ。

━この間、回収トレーを粉砕したりインゴットにしたり、さらには日用雑貨に加工したりと様々なリサイクル手法に果敢に挑戦してきましたが、決め手は見つかりましたか。

 いろんな方法にトライし、トレーに戻すことについても十分研究してきた。しかしその結果、経済面のネックから言ってもまた食品衛生上の安全性の面から言っても食品用トレーへの再生を目指すべきではないとの結論に達している。このため現在リサイクルに関しては、インテリア・シート、家具、大型雑貨等への再生に力点を置いている。一方では、タルク入りの低カロリー型で省資源・省エネルギータイプでもある易焼却処理製品「CT」も開発して普及を図ってきたが、これはさいわい市場で好評を得ており、中国でも大々的に企業化できそうだ。
 けれど、廃プラスチック問題全体について言えば、環境リスクの問題やトータルエネルギーコストの問題を考えると、ごみ発電への利用が最適と言える。国としてもぜひこの方向を強く推進していってほしい。

━ところで、来年4月からは容器リサイクル法が本格施行となります。プラスチック製食品容器業界の対応はどうなりますか。

 現在私たちは、トレーの回収から処理まで全て自らの費用負担で進めているところで、これには各社とも大変な負担を強いられている。今後は自治体が家庭から分別収集することになるので収集負担はあるていど軽減する見通しにする。しかし、それをペレットや加工製品に再生するには大変なコストがかかるのでとても採算は確保できない。これはわれわれにとって引き続き大きな悩みとなる。それだけに行政府には、高炉還元材やコークス炉利用にも大きな道を開くなどの支援をぜひ積極的に進めていただきたいとお願いしたい。
 一方私たち自身としては、廃棄後に問題が生じない製品の開発と育成などにもより多くのエネルギーを投入していく必要がある。当社も、「CT」の育成に引き続き力を入れていきたい。同時に、衛生安全性にも十分配慮した適正なロングラン・ビジョンに基づいた事業展開がこれまで以上に大切になると考えている。