—これからは、あまり手を広げず、重点を絞ってということですか。
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うちは「落下傘」の如く、過去にいろいろなところに手を伸ばしてきた。磁気ディスクがいい例だが、既存事業とあまり関係のない分野にまで出て行った。そのため手痛い目にあった。ああいうのはやめよう。出ていくなら知識や経験を生かせる自分の守備範囲に近いところにしようといっている。つまり「アメーバ戦略」だ。このほうが効率がいい。
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—成長分野には出たい、守備範囲はひろげたいと。
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そう。もっと核になるものがあって然るべきだというご批判もあるかもしれない。だからバイオなどもやっていきたいが、今すぐにとはいかない。もう少し先の検討課題になる。
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—どういうものが重点の対象になりますか。
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柱として3つある。電子材料関係とセメントの特殊混和材、それと特殊機能樹脂や樹脂加工の分野だ。
電子材料は半導体用の溶融シリカ、各種基盤などが中心だが、これは好調だ。大牟田とシンガポールに工場をもっているがともに能力が足りず、増強中だ。
セメントでは特殊混和材、これはコンクリートの強化やトンネル工事に効果がある。また、当社は劣化したコンクリート構造物を再アルカリ化、或いは脱塩化、つまり"リハビリ"して元の強度に戻すシステム、工法技術をもっている。各地でコンクリートの崩落事故が起きているが、うちの工法は専門家の間でも注目されている。
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—今後相当な需要が期待できそうです。
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そう思う。例えばいま第2東名高速道路が工事中だ。総延長530キロ、そのうち4分の1位はトンネルだそうだ。当社の『ナトミック』も順調に出荷されている。また、今後公共事業といってもこれからは道路、構造物などの維持、補修が中心になると思うが、それも明るい材料になる。受注体制を固めたいと思っている。
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—合成樹脂は競争が激化しています。どんな戦略を。
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ポリスチレン、ABS樹脂、塩ビなどをもっているが、ポリスチレンは東洋スチレン、塩ビは大洋塩ビに事業を移管している。業界他社とアライアンスを組んだわけだ。東洋スチレンは合理化が非常にうまくいき、4月に発足して9月中間期には早くも黒字が出ている。ただ塩ビはどうなっていくのか、業界そのものがよくない。構造改善もまだ進んでいるとはいえない。過剰設備廃棄を伴う業界再編の動きが出てくるにはまだ2〜3年かかるだろう。でもそれをやらないと、業界は国際競争の中で生き残っていけない。
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—どういう状態になれば業界は安定しますか。
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とにかく今はメーカーの数が多過ぎる。需要は国内だけでも170万トンはあるわけだから、それに見合った能力で適正生産していけばいい。メーカーが多く設備があまっているから過当競争をやりお互いに赤字を出している。3社か4社に収斂していくしかないと思う。
結局塩ビはモノマーの強いところが勝ち残っていくことになるだろう。これからどういう形で収斂されていくかは分らないが、赤字の痛さに耐えかねたところから消えていくことになるのではないか。
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—電気化学の目ざしているものは何ですか。理念、展望をどうぞ。
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今年から来年、景気は多少よくなっていくと思う。GDP0.6とか0.7とかいわれている。それが化学業界にどの程度の景況感につながるのかわからないが、多少でもよくなった中で、しっかり利益が出るような体質にしておきたい。
社内ではリストラや事業再構築はこれまでかなり力を入れてやってきた。守りの方の体制はできたと思う。だが守りを固めるだけでは点は取れないし、勝てない。これからは点の取れる打線を組んでいくことが大事だ。いまは半導体や情報関連など、こつこつ塁に出られる商品が出てきた。そこへ特殊混和材が出てくれば、三塁打ぐらいにはなる。すると大量点につながる。希望のもてる技術や商品が出てきたのでこれからが楽しみだ。化学業界の中でもそういった特徴のある会社を目ざしていきたい。 |